筆者は中国を主要なフィールドとしつつも、脱中国で注目を浴びている東南アジアや南アジアの、いわゆる「チャイナプラスワン」と呼ばれる国々も足を使って見ている。中国は特に日本にとってなかなか難しい国ではあるが、中国の消費力は相変わらず他のアジアの国々を寄せ付けない。

 地域的には広東省を中心とした華南地方では、やりくりのできなくなった工場が出てくる中、不況感を感じるという話も聞く。また今年に入って脱汚職のため「宴会を控えよう」という動きがあったことから、全体的に飲食業、特に中から上の中華料理を扱うレストランが寂しい状況ではあるが、それでも庶民の生活において不景気だという感じはしない。

 チャイナプラスワンといわれる国が反日デモ後に注目を浴びているが、個人消費に関しては相変わらず中国がすごい。省都クラスの大都市の人気のショッピングセンターには、沿岸部内陸部問わず多くの人が押し寄せている。沿岸部では不況を肌で感じるという地域はあるが、内陸部においてはまだ以前と変わらず、物価こそ高くなっているが消費は旺盛な感覚を受ける。

中国の個人消費が
安定して旺盛な3つの理由

 東南アジアや南アジアの国々も、個人ではなく家族全体の収入でやりくりする点では同じだが、中国においては「男女共働き」という点と「特に高齢者においては公務員が多く、年金がそこそこ支払われている」という点、「国内での競争が激しい」という点の3つから、所得はそこそこあり、安く買い物ができている。

ベトナムのハノイの電器屋で支払待ちの人々

 筆者は直近ではベトナムを訪れた。ベトナムは男女共働きで、社会主義国のため収入も安定してはいるが、国内の競争が中国と比べてぜんぜん激しくないことから、中国人ほど積極的に消費をしている感じは見えない。これは他の東南アジアの国しかり、南アジアの国しかりだ。男性が働かなかったり、女性が社会的に働けなかったり、雀の涙ほどの年金で若者が老人を養わなければならなかったり、国内競争がなく買いたくなるブランドが不足していたりなど、各国それぞれに消費が盛り上がらない事情がある。