李克強首相(右)は、温家宝前首相(左)が果たせなかった構造改革を進められるのか
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 中国では今、「李克強経済学」という言葉がはやっているという。日本のはやりに倣っていえば、「李コノミクス」である。

 中国の1~3月期実質成長率は予想を下回る7.7%となった。4月のHSBC製造業PMI(購買担当者景気指数)も、前月比1.1ポイント減の50.5とさえない。

 昨年、中国政府は景気対策として公共投資プロジェクトの認可を加速したが、民間への波及が弱く、その効果は“最悪期は脱した”程度にとどまっている。期待された新たな刺激策も出てこない。

 これらの状況に、世界の投資家は失望をあらわにした。習近平・李克強政権は、発足後に追加景気刺激策を打ち、8%成長は維持するとみられていただけに、「思惑がはずれた」(鈴木貴元・丸紅経済研究所シニアエコノミスト)格好だ。

 一方で、この結果は「8%との決別を示すものであり、冷静に受け止めるべき」(肖敏捷・ニーズ主席エコノミスト)との見方も少なくない。

 中国経済の構造転換は、まさに待ったなしだ。景気減速には、不動産投資の抑制策や綱紀粛正による一部消費の落ち込みも影響しているが、根本の要因は潜在成長力そのものの低下にある。安価な労働力に頼った輸出と、投資を原動力にした成長モデルは既に限界に達している。肖主席エコノミストは、「追加景気対策の気配もないのは、改革を指揮する李首相の“本気”の表れ」と指摘する。

 政府の役割を減らし、市場の機能を使って、産業構造の転換と成長力の強化を図る、というのが「李コノミクス」の基本だ。具体的には金利や為替の市場化、各種の規制緩和、国営企業の民営化、税制の改革を通じた所得分配と民間企業の成長促進などである。景気減速を甘受してでも、これらの構造改革を進めるのが新政権の方針であることは間違いない。