こうした背景の中、SaaS企業はユーザーが営業を介さずに直接プロダクトに触れ、価値を体験できる仕組みを構築しました。例えば、ビジネスチャットツールのSlackは、無料で誰でも簡単に使い始めることができます。最初は個人単位で導入し、使いやすさや利便性が認知されると、チームや部署、最終的には会社全体で有料版を導入する流れが生まれます。この間、営業担当者が登場することは、ほとんどありません。
一方、従来のSLGは営業チームが事業成長を牽引します。ERP(統合基幹業務システム)などの製品では、営業担当者が経営層に提案を行い、契約までを主導します。
PLGでは、プロダクトの魅力と使いやすさが事業成長に直結します。また、セルフサービス型なので、ユーザーはプロダクトに興味を持ったタイミングで利用を始めることができ、迅速に価値を実感することができます。そのため、特にSaaSやデジタルプロダクトの分野では、PLGが広く市場浸透を目指す際の成功の鍵になっています。
Slack、Zoom、Dropbox、Notion……
PLGはなぜ成功したのか?
PLGは、単なる理論モデルではなく、多くの成功事例を生み出している実践的な戦略です。代表的な成功事例を見ていくと、その効果と可能性がよく分かります。
Slackは、PLG戦略の代表例として知られています。プロダクト自体が「営業担当者」の役割を果たし、営業担当者が登場するのは全社規模での導入が必要になった段階。従来型の営業活動に頼ることなく成長を実現しています。
また、オンライン会議ツールのZoomは、COVID-19パンデミックを機に急成長を遂げました。その成功の鍵は、シンプルな使い勝手と40分間無料の「フリーミアムモデル」にあります。パンデミックによって急激にリモートワークへの移行を迫られた企業にとって、Zoomの簡単な登録プロセスと、アカウントのないユーザーでも参加できる機能は、大きな魅力となりました。