前回の「高額療養費」の見直しは10年前
所得に応じて5段階に分類
前回、高額療養費の見直しが行われたのは15~18年にかけてで、それから10年が経過している。この間に国の社会保障政策は、年齢に関係なくすべての国民が経済的な負担能力に応じて支え合う「全世代型社会保障」の構築を目指すものへと転換している。
また、経済環境の変化によって、15年に30万4000円だった一般労働者の賃金は、23年には31万8300円へと増加している(厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)。
これらを理由に、23年12月に閣議決定された「全世代型社会保障構築を目指す改革の道筋(改革工程)」に、患者が支払う高額療養費の自己負担限度額を見直すことが盛り込まれ、25年からの引き上げが決定した。
25年1月現在、70歳未満の人の高額療養費の自己負担限度額は、下表のように所得に応じて5段階に分類されている。この所得区分の細分化と限度額の引き上げが、25年8月~27年8月にかけて段階的に行われることになった。
たとえば、所得区分が「ウ」(年収約370万~約770万円)の人の25年1月現在の自己負担限度額は、【8万100円+(医療費の総額-26万7000円)×1%】。26万7000円までは3割を負担するが、この基準額を超えた部分の医療費ついては1%だけ支払えばよい。
医療費が100万円かかった場合は、高額療養費適用後の患者の自己負担額は8万7430円。さらに、高額療養費の適用対象となった月が、過去12カ月間に3回以上あった場合は、4回目から「多数回該当」という制度が適用される。所得区分が「ウ」の人は自己負担限度額が4万4400円になり、長期療養者の負担は軽減される。
高額療養費によって患者の負担は一定限度に保たれるので、今後も際限なく医療費がかかるという心配はない。だが、今回の見直しによって、25年8月以降は患者の負担はこれまでよりも増加する。