対話で思いを言語化し
納得感を生む聞き方のコツ

 この事例を読んで、あなたは、どう感じたでしょうか?

 まず、コピーライターのEさんは、「相手の言葉に『関わる』姿勢で話を聞く」というポイントを実践していることがよくわかります。

 ほかにも、依頼をくれたこの社長、どんな会社名にするかのオーダー内容が、会話の最初と最後で大きく変わっていることに気づいたと思います。

 もしかしたら、あなたの近くにも、話の途中で発言内容がどんどん変わる、ちょっとやっかいな人がいるかもしれません。

 ですが、今回の事例においては、社長のオーダー内容が次々と変わっていったことは、とてもいいことだと私は考えます。

 なぜなら、おたがいの理解が深まり、納得感もぐんと高まっているからです。

 最初、この社長は、会社名への思いが「かっこいい名前」くらいの解像度でしか頭のなかで言語化されていませんでした。

 このまま進めてしまうと、どこかのタイミングで「『なんとなく』自分の思いと違う」といったトラブルに発展する可能性が高くなっていたはずです。

 しかし、コピーライターとの対話によって、社長の頭のなかが整理され、会話の最後のほうでは自分の思いを解像度の高い言葉で言語化できて、おたがいが納得感を持って進められるようになりました。

 無意識のうちに感じていた会社名への思いをしっかり言語化したうえで進められると、コピーライターはネーミングを考えやすくなりますし、社長としても、後日提案される会社名の候補案を見て、きっと選びやすくなるはずです。

 このように、無意識の自分の「軸」をしっかり言語化できると、コミュニケーションや判断がとてもスムーズになり、より効率的に、しかもトラブルなく仕事を進められるようになります。

 実は、ほかにも、この短い会話のなかに、言語化につながる聞き方のコツがかくれています。なんだと思いますか?

 次の項目で、くわしく見ていきましょう。

「できごと」を聞くと
思いや意見が言語化しやすい

 さきほどのネーミングの事例を振りかえると、コピーライターのEさんは、社長に会社名への思いを聞いていく際、こんな問いかけをしています。

どういうときに言いやすい会社名がいいと思われるんですか?

ほかに、電話以外でよく会社名を口にする場面はありますか?

 この2つの問いかけをきっかけに、社長の頭のなかが、どんどん言語化されていきました。ここに言語化につながる聞き方のコツがあるのですが、2つの問いかけの共通点は、なんだと思いますか?少し考えてみてください。