……正解は、過去の印象的な「できごと」を思い出してもらうような問いかけになっているという点です。

 このように、まず「できごと」から聞いていくと、思いや意見は言語化しやすくなります。

「相手の思いを聞きだしたいなら、素直に『あなたの思いを教えてください』と聞けばいいのでは?」と思うかもしれませんが、そのままストレートに聞いても、なかなか相手は本当の思いや意見をしゃべってくれません。

 なぜなら、これまでお話ししてきたように、頭のなかにある思いや意見が「言葉」というかたちになっていないからです。言葉になっていないものは答えようがありませんので、ストレートに聞いても、うまく話してもらえないのです。

「どう思いますか?」では
本音は引き出せない

 それでは、なぜ、まず「できごと」から聞いていくと、思いや意見を言語化しやすくなるのでしょうか?

 その「なぜ」を実際にあなたに体験してもらうために、私からいくつか質問しながら話を進めていきたいと思います。

Q あなたが働いている会社の名前について、どう思いますか?

 あなたなら、なんと答えますか?「まぁ、いいんじゃない」「あんまり好きじゃない」「普通かな」といった感想程度の内容なら、すぐに答えられるかもしれません。

 ですが、相手に「なるほど!」と思ってもらえるような、あなたならではの思いや意見まで瞬時に答えることは、かなりハードルが高いはずです。

 なかには、「正直、なにも思いつきません」という人もいると思いますが、会社名は、毎日、目にしたり、口にしたりしているので、どこかのタイミングで、なにかしらは感じているはずです。ただ、それをうまく言語化できていないのです。

 それでは、あなたに、もう1つ質問をしてみます。

Q あなたが普段、自分の会社の名前を口にするのは、どんなときですか?

 これなら、さきほどの質問より、一気に答えやすくなるのではないでしょうか?「電話をとるときです」「名刺交換のときです」など、会社名を口にする「できごと」ならパッと出てきます。