皆さんは図を見て、案外たやすくクリアできるだろうと思うかもしれませんが、実際にイメージしてみてください。どれかの部屋に滞在すると報酬をもらえるということさえ知らずに、何も情報を与えられていない状況で、広大な部屋の前に置き去りにされたと仮定して、このトレーニングがいかに難しいか。シンプルなルールで簡単に理解できるものではなく、説明も関係性も不明な状態だとすぐには理解できないトレーニングなのです。

正答率90%以上
マウスは推論できた

 では、この部屋の関係性をマウスは推測できるのか?というのがこの実験で問いたいことです。そのために、BとDの組み合わせをテストするわけです。ちなみにAとEの組み合わせであれば、マウスはほぼ100%正答します。Aはつねに優位な部屋であり、Eはつねに劣位な部屋なので、その関係は簡単に理解できてしまうのです。

 BとDの部屋を提示した結果はどうだったかというと、最後のトレーニングを終えて30分後の1回目のテストでは、マウスはBもDも同じくらいの時間をかけて探索し、片方の部屋にとどまることはありませんでした。つまり、B>Dという正解にたどりつけなかったのです。

 しかし、その翌日に2回目のテストをすると、はっきりと正解にたどりつきました。

 1回目と2回目のテストの違いは、睡眠です。1回目と2回目のテストの間に、十分な睡眠を取ったマウスは迷いなく、Bの部屋に進んでいき、エサを獲得したのです。

 何十匹ものマウスで実験を行っていますが、正答率は90%以上でした。驚くべき結果だと思います。

 さらに翌日に3回目、翌々日に4回目のテストをしても、結果は同じ。マウスは、B>Dという隠れたルールを完璧に推測できていました。

 ここから言えることは、マウスは推論ができる。ただし、推論できるようになるためにはトレーニング直後の睡眠が必要だろう、ということです。