日銀「緩慢な利上げ」が招く金利上昇ショック、“低金利慣れ”日本経済への過度な配慮はマイナスPhoto:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

日銀利上げ、政策金利は17年ぶり水準
「0.5%超」は未知の世界と言えるが

 日本銀行は1月24日の金融政策決定会合で、政策金利を0.5%に引き上げた。昨年3月にマイナス金利解除で金利正常化に踏み出し、10カ月かけて3回目、累計で0.5%の利上げを実施したことになる。0.5%の政策金利は17年ぶりの水準だ。

 それでも、コロナ後のインフレ対応で2022年以降、急激な利上げを実施した欧米の中央銀行に比べれば、極めて緩慢なペースでの利上げだ。

 それにもかかわらず、24日の利上げ決定後に行われた植田和男総裁の記者会見では、「政策金利が今後、0.5%を超えていく際の実体経済にもたらす影響」について多くの質問が出た。

 確かに、前回の日本の利上げ局面(2006~07年)では政策金利は0.5%、その前のゼロ金利解除後の2000年の利上げでは0.25%で打ち止めとなった。0.5%超の水準の政策金利は、多くの国民にとってはほぼ“未知の世界”といえる。

 近い将来に日銀が利上げのペースを落とすことになるとの予想や、利上げ打ち止めが意識されるとしても、ある意味で自然なことなのかもしれない。

 しかし、推定される中立金利の水準を考えると、利上げのペースダウン予想や打ち止めを考えるのはやや時期尚早だろう。

 むしろ懸念されるのは、長い金融緩和のもとで「低金利慣れ」した日本経済が金利上昇へのアジャストに遅れて、大きなショックに見舞われることのほうだ。