日銀「物価上振れリスク」の正体、人手不足深刻化で高まる賃金の上昇圧力Photo:Tomohiro Ohsumi/gettyimages

日銀、1月展望レポートで
潜在成長率の書き振りを修正

 日本銀行が1月末に公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の中でひそかに注目された点がある。日本の潜在成長率に対する書きぶりの変化だ。

 昨年10月の前回の展望レポートでは、「わが国の潜在成長率を、一定の手法で推計すると、足もとでは『0%台後半』と計算される」と記述されていたが、今回「0%台半ば」に下方修正された。

 潜在成長率が下振れるということは、経済を加速も減速もさせない潜在GDPが小さくなったことを意味し、現実の実質GDPとの乖離率、つまりGDPギャップが上振れることになる。実際、成長率の高くない日本では、潜在成長率が0%台後半か0%台半ばでGDPギャップの水準は大きく変わり、プラス化によって2%物価安定目標の実現に近づくことになる。

 だがより重要なのは潜在成長率下振れの背景にある人手不足による供給制約の強まりだ。

 人手不足を前提にした企業の賃金設定行動への変化のもとで物価が上振れしやすくなっており、そのことは日銀の金融政策運営にも新たな課題を投げかけている。