たい焼きが大好きなのでしょう、並々ならぬ熱意が感じられます。地元のスーパーの駐車場に出店するため、そのあふれる熱意で担当者を説得し、無事お店を出すことが認められました。平日は会社員として働き、週末はたい焼き屋さんとして活動を開始しました。1匹1匹、丁寧に心を込めて焼くたい焼きは高齢者を中心に人気となり、ファンも着実に増えていきました。

 しかし、ある日突然、売上も順調に増えていた屋台を閉じてしまったのです。

 その理由は「体力の限界」でした。実際、その予兆はすでにあったのです。よくよく話を聞いてみると、屋台を営業するために必要な準備や仕込みには、毎回、「引っ越しをするくらいの労力」がかかっていたと言います。平日は会社員として遅くまで働き、週末には引っ越しレベルの仕事を繰り返すわけですから、考えただけでもしんどくなります。

「楽しいけど、無理」とおっしゃっていたその言葉が、今でも印象に残っています。

 では、たい焼き屋さんを続けるにはどうすればよかったのでしょうか?

 例えば、営業時間を短縮することや、アルバイトを雇うなどして、体力の確保に気を使うべきでした。

「好きで得意なこと」なのに仕事がうまくいかない。一体なぜ?『起業 神100則』(新井 一、総合法令出版)

 ですが、そうした策を講じようとすれば、その分、売上が減少したりアルバイトの人件費がかかります。

 次は、この点をどうクリアするか。屋台の活動をYouTubeで発信したり、屋台開業のコンサルティングを行ったり、さらには屋台を貸し出すといった方法で収益の補填を図ることができたかもしれません。

 どんなに好きなことであっても、得意なことであっても、ビジネスにはたくさんの落とし穴がありますので、注意しましょう。