だからこそ、3つのルールは弱者の理論なのです。弱者が強くなるための理論と言い換えてもいいでしょう。

 トランプ大統領が、いわゆる「プアホワイト(白人の低所得者層)」の票を集めることができたのは、3つのルールにのっとって、ひ弱だった自分が大統領にのし上がっていく姿を示して、弱者であるプアホワイトの人たちが共感してくれたという面も大きいと、私は見ています。

強者が弱者の理論を突き通してはならない
強者に本当に必要なものとは

 そして、大切なのはここから。

 弱者の立場を克服して強者の立場になったのなら、ずっと弱者の理論を突き通すことはよくありません。

 ただ、今の世界情勢を見れば分かるように、トランプ、プーチン、習近平は一国のトップという強者になっても3つのルールを貫いています。こうしたトップリーダーが国を率いると強権国家となり、国内外に混乱が起こり、悪影響をもたらします。

 私は、強者になった人は「寛容の心」を持たなければならないと考えています。論語には「恕(じょ)」という言葉が出てきます。これは「許す」という意味です。他人を思いやり許さなければならないと、孔子は説いています。この言葉も寛容の心に通じます。

 中小企業の経営者においてはオーナー経営者が多く、彼らは強い立場にいます。そうした人たちは、寛容の心を持つべきです。強権経営を続けていると、いずれ社内の反発を招いたりして、経営が行き詰まると思います。

 私は高校生のときに、母に勧められて薬師寺が主催する般若心経の写経をしたことがあります。その最後のところには、こう書いてありました。

「かたよらない心 こだわらない心 とらわれない心」

 続いて、

「ひろく ひろく もっとひろく これが般若心経 空の心なり」

 かたよらない、こだわらない、とらわれないことは大事なことですが、「ひろく ひろく もっとひろく」はもっと大事。平仮名で書いてありますが、私は寛容の「寛」という漢字を当てはめています。「ドラえもんのいない世界」を読んでいて、そんなことを思い出しました。

 (小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)