生成AI 大進化#6Photo:PIXTA

生成AIの性能を決める「データセンター」では日本の電子部品が大量に使われている。コンデンサーや電池、センサーで高性能品を供給するトップメーカーに需要が殺到している。特集『生成AI 大進化』の#6では、AIサーバーで成長期待大の日本企業8社を、業界のプロが厳選した。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)

生成AIの恩恵が大きい
データセンター向け電子部品

 まだら模様ながら底入れの動きが出ている電子部品の市況を見ると、活況を呈しているのが、生成AI(人工知能)普及の恩恵が大きいデータセンター向けの製品だ。また、スマートフォン向けも在庫調整一巡の動きを見せている。一方で産業機器向けはFA(ファクトリー・オートメーション、工場自動化)用途の回復が遅れる。車載向けでは電気自動車(EV)向けの成長が鈍化しており、一部で在庫調整の動きとなっている。

 生成AIに欠かせない電子部品は多いが、中でも需要急増で注目されているのが、データセンター向けの「AIサーバー」の中核部品である積層セラミックコンデンサー(MLCC)だ。

 このMLCCの世界シェアトップが村田製作所だ。同社によれば、電子部品の需要予測として、前提となる2024年度のスマホの世界販売台数を前年度比3%増の11億8000万台と見込む。新興国向けのローエンド端末の台数増に加えて、AI機能などを搭載したハイエンド端末の市場投入も予想する。特にハイエンドの5G(第5世代移動通信システム)端末は同17%増の7億7000万台と高い伸びを予想する。

 生成AIの普及によるサーバーやデバイスの進化の恩恵は今後さらに広がりそうだ。ハイパースケーラーがデータ処理のためのデータセンター建設を急いでいる中、先端半導体や電子部品の需要が拡大する。

AI搭載のiPhoneやCopilot+ PCに
日本製の電子部品は欠かせない

 端末側で処理を行う「エッジAI搭載」のパソコンやスマホの普及も来年以降、本格化しそうだ。

 米アップルが6月の年次開発者会議「WWDC」で発表した生成AIサービスの「アップルインテリジェンス」について、アナリストからは評価する見方が相次いだ。買い替えサイクルの到来や生成AI機能搭載のiPhoneへの需要に加えて、サードパーティー製のAIアプリケーションを通じたサービスが今後数年間で増加する可能性がある。アップルインテリジェンスでは、従来のアプリケーションにAI機能が統合され、ユーザーは別ウインドーを開き質問文を入力するなどの手間をかけることなく利用できる。

 長い文章の要約やメールの文章の校正などでも簡単にAIの手助けを受けられる。また、スマホに蓄積されたパーソナルな情報を基にした情報提供などの新たな体験ができるもよう。24年中に「iPhone 15 Pro」などのモデルで米国・英語版から利用できるようになり、各国語の対応は25年になると予想されており、詳細な仕様などのニュースフローに注目が集まる。

 パソコンメーカーもAI対応機種で攻勢をかける。米調査会社IDCによると、AIパソコンの出荷台数は、24年の約5000万台から27年には1億6700万台以上に増加し、全世界のパソコン出荷台数の60%近くを占めるようになると予測している。

 米マイクロソフト(MS)は、5月にウィンドウズOS(基本ソフト)に対応した新たなAIを搭載したパソコン「Copilot+ PC」を発表した。クラウド上でAIが稼働する従来モデルと異なり、端末上だけで稼働するため、より高速な処理が可能となる。

 AIにはより高性能・低消費電力のチップが必要となる。これに対応する高スペックの新型パソコンをマイクロソフトは6月に発売。中国レノボなど各社も、AI対応を目玉に高スペックモデルを投入する戦略を打ち出した。

 こうした中で日本の電子部品メーカーの高品質な製品への引き合いが強まっている。直近ではデータセンター向けなどでも需要が拡大中だ。

次ページでは、データセンター向けや、AI搭載のパソコン、スマートフォンに欠かせない電子部品を供給するトップメーカーを8社の強みを業界アナリストが分析する。