いまシリコンバレーをはじめ、世界で「ストイシズム」の教えが爆発的に広がっている。日本でも、ストイックな生き方が身につく『STOIC 人生の教科書ストイシズム』(ブリタニー・ポラット著、花塚恵訳)がついに刊行。佐藤優氏が「大きな理想を獲得するには禁欲が必要だ。この逆説の神髄をつかんだ者が勝利する」と評する一冊だ。同書の刊行に寄せて、ライターの小川晶子さんに寄稿いただいた。(ダイヤモンド社書籍編集局)

三流は「考えが足りない」、二流は「合理的に考える」。では一流は?Photo: Adobe Stock

合理的な判断をしているはずなのに

 私はこれまで、数多くの判断ミスをしてきた。それなりに経験もあり、分別もつくいい大人なのに、いっこうに判断ミスが減る気配がない。これはおかしいんじゃないだろうか。

 たとえば、ヨガの動画をお試し価格で購入しようとしたところ、年間契約をするとあれこれ特典もついてお得だとすすめられ、年間契約をする判断をした。この動画を見ながら毎日ヨガをやるつもりだったのだ。ところが最初の1週間でやめてしまい、11か月と3週間分のお金を無駄に払ったことになった。

 また、つい先日は、背中を伸ばすストレッチ器具(1万円)をネット通販で購入する判断をしたが、届いた日に3分で飽きてしまい、いまや邪魔な物体と化している。

 こうした例は枚挙にいとまがない。

 私には合理的な判断をする能力が欠けているのだろうか。

 各ケースについて、一応合理的と思える根拠に基づいて判断はしている。

・相場と比べて価格は妥当か?
・実績等から見て、効果に信頼を感じられるか?
・レビューや販売数等から見て、人気商品であるか?
・デメリットを上回るメリットがありそうか?

 買い物を例に挙げたが、それだけではない。法人を作るか否か、仕事依頼を受けるか否か、PTAの役員を引き受けるか否か、この株をいつ売買するかなど、さまざまな判断に際して合理的に考えようとはしている。

 それなのにあとから「失敗した」と感じることが多いのだ。

 なぜか。

 その答えを、2000年以上前の哲学者エピクテトスが教えてくれた。

自分はどんな人間か?

しかし、理にかなうものとかなわないものを判別するために、わたしたちは、外的なものの価値の相場に加えて、自分の人格にともなう判断基準も使っている。(エピクテトス『語録』)
――『STOIC 人生の教科書ストイシズム』より

 私たちはものごとを合理性だけで判断しているわけではなく、「自分の人格」によって判断しているところもあるよと言っている。

 自分はどういう人か?それを知っておく必要があるというのだ。

 私は自分の性格、性質を考えてみた。

 好奇心旺盛、新しもの好き、飽きっぽい、大雑把、リスクを小さく見積もりがち、安請け合い、つねに何かしていないと落ち着かない……。

 こうして見ると、なぜこれまでの判断に自分の性質を考慮に入れなかったのかと不思議になる。

 いくら合理的に考えているつもりでも、実際にはその思考は人格に大きく左右されているのだ。

一流は「人格を高める」

 さらに言うと、エピクテトスが伝えたいのは人格を高めれば判断力も高まる」ということだろう。

判断ミス? それって、人格が影響しているかもよ? 判断材料がどうこう言っていないで人格を高めなよ

 なかなか厳しいご指摘である。

 たった一文でこれだけのことに気づかせてくれたエピクテトスは、ストア派の代表的な哲学者だ。

 いま、ストイシズム(ストア哲学)の教えが見直され、世界に爆発的に広がっているらしい。私は納得した。現代の悩みも一瞬で解決してくれるような、非常に実践的な哲学なのだ。

(本原稿は、ブリタニー・ポラット著『STOIC 人生の教科書ストイシズム』〈花塚恵訳〉に関連した書き下ろし記事です)