起業で成功する人、失敗する人にはどんな違いがあるのか。飲食店を起業して1年もたたないうちに予約をしないと入れない店に成長させ、その後「ドムドムハンバーガー」をV字回復させたドムドムフードサービスの藤﨑忍社長に、ジャーナリストの笹井恵里子さんが聞いた。(ドムドムフードサービス代表取締役社長 藤﨑 忍、ジャーナリスト 笹井恵里子)

夫が心筋梗塞で倒れて
自分が働くしかない

 第1回から第5回までは主に組織で働く人を対象に、仕事ができる人の特徴や、部下のモチベーションを高める上司について私の意見を述べました。今回「起業」を考える人に、私自身の体験を踏まえて話したいと思います。起業で成功する人、失敗する人とはどのようなタイプでしょうか。

 私の初就職は2005年、39歳の時だったと第1回で述べました。地方政治家の夫は選挙に落選し、次を目指していたときに心筋梗塞で倒れてしまいました。当時、我が家の収入は夫の稼ぎに頼っていましたから大幅な収入ダウン。息子は私学に通っていましたし、夫の治療費もかかる。選挙費用の借金も残っていました。私が働くしかありません。

 その時、知人の紹介でSHIBUYA109のアパレルショップで「雇われ店長」という形で就職がかなったのです。無我夢中で働き、5年で年商は倍に。ですが経営方針の違いから退職せざるを得なくなりました。

就業経験も乏しく資格もない
家族を養うために起業を決意

 そして私は再び無職になったのです。アパレルショップを退職する直前、夫は病の回復途上にあり、09年の都議選で再起を懸けようと頑張っていました。政党の公認も得られたのですが、そこで脳梗塞を発症してしまい、彼は社会復帰を断念するしかありませんでした。その上、介護が必要な状態になってしまって……。

 ですからアパレルショップを退職してから働かずに暮らせるような貯蓄は当然なく、フラフラしている暇はありませんでした。私はすぐに次の仕事を探しました。

【ドムドム社長が考える】起業家として「成功する素質のある人」と「ない人」の“たった1つの違い”とは?ドムドムフードサービス代表取締役社長の藤﨑忍氏

 自分の得意なこと=料理が生かせる、飲食の仕事を探そうと思い、アルバイト情報誌を見て新橋にある居酒屋のアルバイトに応募すると、即採用になり働き始めました。楽しく仕事をしていたのですが、勤務5カ月目にそばに空きスペースができてテナントを募集し始めたのです。私はここで自分のお店を持とうと、つまり起業することを決断しました。常連のお客様の「やってみたら?」という一言がきっかけでした。

 当時44歳の私は、就職経験がアパレルショップしかなく、資格も何も持っていません。そんな私がこれから普通に就職して、夫と息子を守れるサラリーをもらえるわけがないと思いました。起業したほうが自分の目標とする数字、お給料がいただけるのではないかと考えたのです。