![【社説】トランプ氏の鉄鋼関税、不都合な真実](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/1/b/650/img_1b797efd14bf8720acd406aaf02b2c47806389.jpg)
ドナルド・トランプ米大統領は10日、すべての輸入鉄鋼・アルミニウムに25%の追加関税を課す大統領令に署名し、経済にまたしても不確実性のショックを与えた。トランプ氏のアドバイザーたちによれば、この関税は他の目的のための取引材料というよりも、経済的観点からの「戦略的」なものだ。米国の製造業者や労働者に損害を与える戦略なのだろうか。
トランプ氏が1期目に実施した関税では、まさにそれが起きたことであり、同氏がその失態を繰り返す恐れがある今、この重大ミスによる損害を振り返ることには意義がある。トランプ氏は2018年3月、国家安全保障を守るという名目の下、鉄鋼に25%、アルミに10%の関税をかけると発表した。今と同様に当時も、米国の金属輸入の大半はカナダ・メキシコ・欧州・韓国・日本などの同盟国・地域からのものだった。
トランプ氏は、国内の鉄鋼とアルミの生産を増やすために関税が必要だと述べた。だが、米国の生産量は既に増加傾向にあった。トランプ氏が実施した規制緩和と2017年の税制改革の影響で設備投資が活発化したためだ。2018年3月に米国の鉄鋼生産設備の稼働率は78.5%と、2016年12月の72.4%から上昇していた。
関税を望んだ米鉄鋼・アルミ企業の真の目的は、利益を増やすことだった。外国からの輸入品の価格を引き上げれば、これらの企業は販売価格を上げられる。その代償は、米国の金属2次製品業者や下流の製造業者が払わされた。
その一例として、米国製くぎの約半分を生産していた企業ミッドコンチネント・スチール・アンド・ワイヤを考えてみよう。鉄鋼関税の発効後、同社の売り上げは半分以下に落ち込み、従業員80人が解雇された。さらに、同社のミズーリ工場が閉鎖すると懸念した120人の従業員が退職した。こうした悪影響を受け、米商務省は同社を鉄鋼関税の適用除外とした。