日米首脳会談で対日関税引き上げは当面回避も、日本経済揺るがすトランプ政策「3つの波及経路」ホワイトハウスで会談する石破茂首相(左)とドナルド・トランプ大統領=2月7日、アメリカ・ワシントン Photo:JIJI

日米首脳会談、強硬発言封印のトランプ氏
「USスチール買収」反対も翻意!?

 石破茂首相とトランプ米大統領の初めての首脳会談が2月7日(日本時間8日)、ワシントンで行われた。

 就任早々から、バイデン前政権時代のエネルギー、環境政策の大転換やカナダ、メキシコ、中国などへの関税引き上げ表明に加え、「パナマ運河返還(要求)」、「ガザ所有」発言など、「米国第一」路線を突き進むトランプ大統領が、どのような「対日要求」をするのかが、注目された。

 会談では、自由で開かれたインド太平洋の堅持など、日米の防衛協力の一層の拡大で日米同盟を強固にしていくことを確認。経済政策では日本の対米直接投資1兆ドル(約151兆円)への引き上げのほか、日本による米国LNGの輸入拡大の方向性が示された。

 トランプ氏の求める対日貿易赤字の縮小を日本の輸入拡大で行う方向性が共有され、懸念された日本製品を対象にした関税引き上げは見送られた。

 この点は日本経済にとってポジティブといえる。また日本製鉄の「USスチール買収」問題では、トランプ氏は「買収ではなく投資だ」と、取引を容認し得る姿勢を示したことも日本にとって期待の持てるものだ。

 一方で、当面、日本経済にとっては、対中・カナダ・メキシコに対する関税が貿易やサプライチェーン戦略に及ぼす影響やその対応が課題となる。またトランプ氏の“ドル安志向”、“政策の不確実性”が為替や設備投資に与える影響も懸念される。

 トランプ氏は、日本に対する関税引き上げに対しても対日貿易赤字縮小のための手段の一つであるとの考えは示しており、再び対日関税が俎上に載るリスクが排除されたわけではないことも注意が必要だ。