苦労話をオープンに見せるのは、僕もあまり好きじゃない。ただ、苦労したことは必ず自分の糧になるし、それを乗り越えた末に手に入れた志は、自分が表現することや顔つきに自然とにじみ出てくる。

 そんな暗闇を乗り越えていくには、どうすればいいのか。僕が言いたいのは、「心にある光を頼りにせよ」ということだ。その光とは、これが正しいと自分が信じて目指す道の先に見えるもの。それが自分を未来へと導いてくれる。

 芸能界はライセンス制でもないし、なんの保障もない。昨日手にした自信は、次の朝、握りしめたその手を開いたときには、跡形もなくなっているかもしれない。残念だけれど、それが真実だ。過去の栄光や自慢を後生大事に抱えていても、なんの意味もない。

 でも、自分が信じて目指す光は、何があってもなくならない。その光を持っているか、持っていないか。それが人生を左右する。実体のない、光だけを心の中に灯すのだ。他には何もない。過去の余録もあてにはできない、たったひとりの孤独な戦いだ。でもだからこそ、面白さだってあるのだ。先が見えない不安と、それゆえの面白さの間を毎日行ったり来たりするのが、この世界の厳しさでもある。

 きっとどの業界でも、たったひとりで戦うフリーランスや事業主の方々なら同じじゃないだろうか。自由である反面、孤独で厳しく、ハイリターンだけれどリスクも高い。人生とは、期待と不安とが表裏一体になった矛盾だらけの代物なのだ。

自分が出演した番組を
一切観ない理由

 僕は、自分が出演した番組は一切観ない。3日前のものなんて、すでに過去の自分の痕跡でしかない。編集でがっかりさせられることも多いし、感覚としてはもはや、ただ「素材」を提供して「はい、おしまい」と見切っている感じだ。

 とくに最近のバラエティは、テロップやナレーションが多くて過剰包装だと思う。もっとシンプルでいいのに、なんでも全部説明してしまう。視聴者はもっとおりこうさんなのに、至れり尽くせりすぎる。