しかし、リモートワークが普及し、マネージャーとプレイヤーが物理的に離れた場所で働く現在のようなビジネス環境では、問題のある言動を直接観察することが難しくなっています。

 だからこそ、ますます接点がある機会に記録することが重要なのです。例えば、いつ、どんな場面で、どんな発言や行動があり、それによって周囲のメンバーにどのような影響を与えたのかを、具体的に記録していきます。

 コミュニティクラッシャーの特徴として、上司や影響力のある人には取り入る一方で、立場の弱い人には高圧的な態度を取るという二面性があるため(前回の記事で詳しく解説)、マネージャーは直接観察できない場面での言動については、周囲のメンバーから情報を収集し、複数の視点から実態を把握することが重要です。

 マネージャーは、こうした記録や情報をもとに、まずは本人に対して行動改善を要望します。その際、具体的な事実に基づいて問題点を指摘し、どのような改善が必要かを明確に伝える必要があります。さらに、再三の注意や指導にもかかわらず改善が見られない場合は、人事部門と連携して、より厳しい対応を検討することになります。

クラッシャーを事前にはじくには
多角的な合せ技が重要

 そもそもコミュニティクラッシャーのような人材を採用しないためには、人事部門による適切な見極めが重要です。採用時の見極めには、主に面接、適性検査、リファレンスチェック、そして業務委託などのトライアル期間の設定という4つの方法があります。

●「面接」で回答を細かく掘り下げる

 面接では、候補者の過去の行動や考え方を細かく確認します。特に、大きな仕事をチームで進める際の意思決定や、会議などで、意見が対立した場合など「対人コンフリクト」が生じた際に、その人がどのような言動を取ってきたのか、具体的な状況を深く掘り下げて質問していきます。困っているメンバーへのサポート、役割を超えた自主的な行動の有無なども詳しく確認します。

 部下とのコミュニケーションの取り方や、プロジェクトで遅れが生じたときの対応なども重要なポイントとなります。特にマネージャー職の候補者に対しては、過去の部下への指導方法や、本人が気づいていないようなハラスメントと捉えられるコミュニケーションがなかったかなども確認します。また、チームで決めたルールやポリシーへの従い方、利他的な行動が取れるかといった点も、会話を通じて見極めていきます。

 この際、単に表面的な回答を得るだけでなく、その時の状況や具体的な行動、考えたことなどを細かく聞いていくことがポイントになります。「いくらでも嘘をついて取り繕えるのではないか」と思われるかもしれません。

 確かに面接官には高い技量が求められますが、丁寧に細かく確認していけば、ある程度の見極めは可能です。例えば、本人が実際に経験したことであれば、その時の状況や行動を具体的に説明できるはずで、細かい状況の説明に窮することが重なれば、嘘をついている可能性があることになります。