軽いクルマは衝突に弱いんじゃないの?
F:軽くする上でもお客さんのデメリットと仰いましたが、私はどうしても衝突安全性を気にしてしまいます。有り体に言うと、軽いクルマは衝突に弱いという印象があります。
鈴:これはもう本当に、どう衝撃を吸収するかの話になります。要は「衝突時にどう潰れるか」。このプラットフォームはとても良くできていて、軽いけれども守るべき所は壊れずに、エンジンルーム含めて前の部分がしっかり潰れるようにできています。
今回特に工夫したのがAピラーです。スペーシアはフロントウィンドウが立っている。イコールでAピラーが立っている。これが寝ていれば衝突時の入力がスムーズに後ろに伝わるのでボディ全体でうまく衝撃を吸収できるのですが、ピラーが立っていると力を伝えにくい。だからこのAピラーを折れたりしないように太く頑丈にしなくちゃいけない。でもそうすると重くなってしまう。
F:なるほど。ピラーが寝ていれば横方向に力が伝わりやすい。でも立っていると、足払いのような状態になってしまい後ろに力が伝わらない。
鈴:そう。だからより高品位の強度の高いハイテン鋼を使用しました。
F:なるほど。でもハイテン鋼は高い……。
鈴:そう。ハイテン鋼は高い。だから今まで5つの部品だったAピラーを一つの部品にして、部品点数を減らして「重くしない、高くしない」で性能を上げるという工夫を、取引先さんも含めて技術開発していきました。
F:そういう開発は、製鉄会社とやるわけですか?
鈴:製鉄会社さんと加工会社さんですね。やっぱりハイテン鋼のような硬い鉄って、加工が難しいので。狙った形になったと喜んでいても、時間が経つと元に戻っちゃうんですよ。もちろん完全に元に戻るのではなく、じわっと少しだけ戻っちゃう。