そこで「油」だったか「湯」だったかと考えながら、「湯」だったはずだと思いいたり、こんどは熱いお湯を思い浮かべる中で、そういえばあそこに湯島不動産という不動産屋さんがあったなとか、そのようにいろいろ連想していくうちに、「ああ、湯島だった!」と思い出すことができたのです。

 このように最初の「3文字」という一つのヒントから、それに少しでもリンクする単語や言葉を連想ゲーム的につなげていくことで、答えを導き出せることは珍しくありません。何かを思い出すときに、この連想というのが大事なポイントになります。

 ちなみに、場所を思い出すときは、自分がそこの場所にいるような感覚、その土地に行って、何があったかなというのを思い出すのもいい方法です。湯島駅の場合、不忍池周辺のことをいろいろ思い出していました。

 人間の記憶というのは、場所と強く結びついているので、思い出しやすくなることがあります。

 私はお会いする人からよく、「人の顔と名前が覚えられない」というお悩みを聞きます。それはテレビに出ている芸能人の名前だったり、仕事関係で名刺交換した人の名前などで、「顔は見覚えがあるんだけど、名前は何だったかな?」というケースが多いです。

 ある人の顔を見て名前が思い出せないときも、先ほどの湯島駅の例のように連想していくのがポイントになります。

 確かそんなに特殊な名字ではなかったはずだなと考えたり、身近な友人や知人の顔と名前を思い浮かべたりしてみます。鈴木さん、佐藤さん、伊藤さん……。プロ野球選手やサッカー選手、俳優、アーチストなどの有名人でもいいでしょう。

 そうやって少しずつ答えをたぐりよせていきます。最初は難しいですが、数をこなしていくうちにだんだんと慣れていきます。

思い出しやすい状態で記憶する
「記憶のフック」のつくり方

 そもそも、人間の記憶は「再生記憶」と「再認記憶」の2種類に分けられます。

 再生記憶は、過去に記憶したことを完全に思い出すことです。人の名前の場合、人の顔を見て名前が言えるというものです。