
日産自動車の内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)が退任する方向で固まった。来週開催予定の指名委員会では、ジェレミー・パパンCFO(最高財務責任者)が後継の「暫定CEO」として選出される方向で調整が進んでいる。パパン氏は業績悪化の元凶である北米事業の不振を招いた人物。にもかかわらず白羽の矢が立てられたのはなぜなのか。特集『日産 消滅危機』の#25では、パパン氏が選出濃厚となった理由を紐解きながら、指名委員会の呆れた内実を明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集長 浅島亮子)
北米事業不振を招いた戦犯に
白羽の矢が立った「意外な理由」
運命のXデーは3月6日。この日に開催予定となっている日産の指名委員会で、内田誠社長兼CEO(最高経営責任者)の解職、および後継社長の選任について議論されることになっている。
内田社長が就任してから5年余り。急激な業績悪化、杜撰なターンアラウンド計画、1カ月半で散ったホンダとの統合交渉――。これらは経営手腕の欠如が招いた結果であり、内田社長自身の責任は免れない。
また業績不振に陥った後でも、自らのクビと引き換えに、日産の有形無形の資産を守るための交渉を金融機関や協業パートナーともできたはずで、内田氏が保身に走る姿勢は日産社員をしらけさせるには十分だった。
そんな内田氏を任命し政権を継続させた、日産の指名委員会や取締役会の怠慢も批判されて然るべきだ。
ダイヤモンド編集部の調べでは、ジェレミー・パパンCFO(最高財務責任者)が後継の「暫定CEO」として選出される見通しだ。急な交代となるため、肩書きには暫定的に選ばれたという“但し書き”が付く模様だ。
パパン氏は、日産の最高意思決定機関であるエグゼクティブ・コミッティ(EC)メンバー13人うちの一人。今年1月にCFOに就任する直前まで、北米事業の責任者であるアメリカズマネジメントコミッティ議長を務めていた。
ある日産関係者は「先頭に立って日産全社のリーダーシップをとる人物ではない。パパン氏よりも人望があるという意味で、チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)のギョーム・カルティエ氏が就任した方がまだマシだ」と言い切る。
日産の業績悪化の元凶は北米事業の不振にある。そんな戦犯に白羽の矢が立てられたのはなぜなのか。
次ページでは、パパン氏が選出濃厚となった「意外な理由」を紐解きながら、指名委員会の呆れた内実を明らかにしていく。社長人事で強力な権限を持つ指名委員会が、いかに機能不全に陥っているかがよく分かろうというものだ。