
ついに日産自動車の内田誠社長の退任が決まった。業績悪化を招いた責任を取る。後任のイバン・エスピノーサ氏をはじめとした新たな経営陣で、経営を立て直すことができるのか。特集『日産 消滅危機』の#26では、エスピノーサ氏に求められる役割と、一度破談となったホンダとの協議の行方に迫る。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)
内田社長は従業員から信認を得られず退場
新社長に求められる「売れるクルマ」の発売
日産自動車は11日、内田誠社長が3月末で退任すると発表した。2025年3月期の純損益が800億円の赤字(前期は4266億円の黒字)を見込むなど業績が急激に悪化しており、経営悪化の責任を問われた格好だ。後任には商品化企画を担当するチーフ・プランニング・オフィサー(CPLO)のイバン・エスピノーサ氏が就く。
内田社長はオンライン会見で、「従業員から信認を得られなくなったことなどを踏まえ、新しい経営体制に移行し、1日も早く再スタートを切ることが最善と私自身も判断した」と語った。6月開催予定の株主総会までは取締役は続ける。
内田氏は、元会長のカルロス・ゴーン氏の逮捕で社内が混乱していた19年12月に社長に就任した。業績の回復に向けてゴーン元会長時代の拡大路線からの転換に着手。30年までの長期ビジョンの策定やルノーとの資本関係の見直しも手掛けた。ただ、直近は中国や北米での販売不振により業績が低迷。ホンダと経営統合に向けた交渉をわずか1カ月で打ち切ったことで経営者としての素質を疑問視する声が社内外から上がっていた。
指名委員会が後継者として選んだエスピノーサはメキシコ出身で、日産には03年10月に入社した。主に商品企画畑を歩み、常務執行役員などを経て24年4月からCPLOを務めている。
後任候補としてジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)を推す声もあったが、業績悪化の元凶である北米事業の不振を招いた人物ということで見送られた模様だ。
職を辞すのは、内田氏だけではない。副社長として内田氏を支えてきた中畔邦雄氏、坂本秀行氏、星野朝子氏らの退任も決まり、執行役5人のうち4人が去ることとなった。
今回刷新された経営陣で、再び日産を成長軌道に乗せることができるのか。次ページでは、エスピノーサ氏に求められる役割と、ホンダと経営統合の協議再開の可能性について明らかにする。