A 確かに、怒られてからが勝負みたいなところはありますね。「真剣にあなたのことを考えていた」という誠意を伝えられるか、そして「結果として失敗してしまって申し訳ない」という反省の意を示せるかを顧客から一番見られてた気はします。そのストレスがかかるような状態のときに、いかに誠意を失わないかみたいなことですかね。

B そういった状況では、人間性が出ます。だから、人間性が整ってない人というはプライベートバンカーではいられないと思います。

 当社でもプライベートバンカーはそうした適性を見て、配属が決められます。また、人と人ですから、顧客と相性が合わなければ、担当を変えるということもあります。そういう意味では、シビアな世界ではあります。

A ちなみにどういう人がプライベートバンカーに選ばれるんですか?

B そうですね…言語化するのが難しいのですが、顧客の懐にうまく土足で入り込める感覚がある人ですかね。相手が大物だからビビってしまう人ではダメです。

 下手に土足で踏み込むと、顧客は怒ります。しかし、踏み込みが浅いと頼れる存在にはなれません。我々の仕事の適性はこの辺でわかれますかね。適性というより、もはや人柄なので、トレーニングして鍛えるのではなく、持っているか、持っていないかという性質のものだと思います。

A ズカズカ入り込んで失敗している人もいますよね。私は、よく「石を置いてくる」という言い方をします。適正な大きさの石をちょっとずつ置いてきて、徐々に大きくしていく感覚です。

 石の大きさの適正サイズを決めるのは、あくまで顧客です。スピード感を重視する人もいれば、じっくり関係性を構築したい人もいる…その辺りの価値観を共有できるかどうか成否の分かれ目でしょうね。

B もう1つ違ったポイントを挙げると、富裕層の信頼を獲得するには、クイックレスポンスがものすごく重要です。

 私の経験では、お金持ちは時間をかけてじっくり返信するより、返せるところからパパッと返信することを好む方が圧倒的に多いです。事業家の方が多く、時間に対するコスト意識が高いのだと思います。

A そうですよね。何か尋ねられたときに、「Aという方法でできると思いますが、できない可能性としてはBが想定されます」と即レスするようにしています。最後は実現できるように持っていくのですが、中間報告を欠かさないことも意識していました。

 そのサイクルは短時間であるほど喜ばれますし、報告は的確に短く伝えることも重要です。そうすると、その次に言われるであろうことを想定して先回りできるかどうかというフェーズに入ります。「それ、俺が言おうとしてたこと」だと思わせたら、こちらの勝ちです。中には、俺まだ言ってねだろそんなこととかいうことで怒る人もたまにいますが…俺も先ほど話した価値観の共有というところにつながります。