一方で、他業界の在籍者に関しては、キャリア戦略を大きく見直す必要性があります。現職で高いパフォーマンスを出したところで、それは総合商社で求めている経験やスキルになるとは限らないからです。

 資格取得を通じて切符を手に入れようとされる方もいらっしゃいますが、海外MBAに進学して希少性を獲得する、CPA(公認会計士)ホルダーとなり会計系企業でファイナンス経験を積むなどの修行期間を挟まない限り、資格だけでチャレンジすることは難しいと思っていただいてよいでしょう。

 基本的な方針としては、ハブキャリアとして別の環境でスキルをつけてからチャレンジする方針になる可能性が高く、その場合コンサルティングファーム、または現職から最も近い専門職へのチャレンジを志す形になると思います。いずれの場合も、中長期的な視点をもって検討する必要があるため、キャリアの専門家に相談した上で方針を決めていただくことをお勧めします。

 次にデベロッパーに関してですが、総合商社と異なりどの業界に在籍していないといけない、特定の専門性を持ってないといけない、ということはありません。ただし、複数のステークホルダーを巻き込むようなプロジェクトワークの経験を積むことは、必ず意識しておきましょう。この経験なくして採用される可能性はほとんどありません。

 テレビ局や広告代理店にいる方であれば自然とそういった経験を積むことができると思いますが、コンサルティングファームにいる方であっても短期的なプロジェクトを複数経験しているだけでは評価されないため、うまく道を切り開いていく必要があります。

 そしてプロジェクトワークの経験だけでは、新卒プロパーの人材と比較して採用される理由にはならないため、商品企画や事業企画などのデベロッパー以外の業界における企画経験、あるいは海外ビジネスの経験を積むことを推奨します。

 やはり中途採用では即戦力人材であるかどうかが重要であり、それは新卒プロパーの人材と比較して判断されるものになります。現職で高く評価されていることはもちろん重要ですが、市場から見たときに明らかに優秀な人材であることがポイントです。こちらも、エージェントを通じて確かめた上でキャリア戦略を見直すことを推奨します。

 最後に、両業界に共通する注意点をお伝えします。

 それはとても良い環境であるがゆえに、キャリアを考えることをおろそかにしてしまうリスクがあることです。

 待遇面だけを評価するのであれば、総合商社やデベロッパーを出る理由はほとんどなく、仕事の規模感も大きいためにほとんどの人にとっては魅力的な環境に映ると思います。ただ、昔よりも情報が入ってきやすくなっている中、本当に価値観に合う環境ではない限り、ずっと同じ環境にい続けることに対して確信を持つことは、とても難しい時代になっています。

 私がご支援した方にもよくお伝えするのですが、キャリアは常に考え続けるべきものだからこそ、たとえみんながうらやむ環境にいたとしても、継続的にキャリアは見直してほしいと思っています。

 総合商社・デベロッパー業界志望の皆さんも、憧れの業界に入社することはゴールではなく、スタートであることを認識していただければ幸いです。