エンディングノートに
葬儀場名を書き残すだけでは不十分
冒頭の牧田さんは、父が残したエンディングノートに書いてあった葬儀会社に電話したのに、「1週間先まで予約は取れません」と断られたといいます。残念ながら、葬儀会社を指定するだけでは無意味でした。葬儀業界関係者曰く、「今や10社ほど書いておいてもらうことが重要」なのです。
さらに、その葬儀社に知り合いがいるのかどうか、担当者の名前、それに互助会の会員番号などがノートに書かれていることが必要です。葬儀代は加入している生命保険の死亡保険金から出すのか、互助会から出すのかまで明記し、保険金から支出するなら受取人の名前なども必要になります。参列者の友人の連絡先だけを書き残して安心していてはダメなのです。
それにしても、最近、棺を取り違えるなど最悪のミスが増えています。これは、デフレと人手不足が原因です。
人口に占める高齢者の割合が増えていることに伴い、一般の葬式(一般葬)も徐々に増えているとはいえ、注目したいのは単価の低いお葬式の種類が増えていること。今や、葬式の種類の中で最多を占めるのは家族葬で、全体の50.0%に上ります。コロナ前までは考えられないことです。対して一般葬はわずかに増えてきてはいるものの全体の30.1%しか占めていません。3番目に多いのが一日葬10.2%で、4番目が直葬・火葬式9.6%です。
24年の全国の死者数は161万人であり過去最多でした。葬式そのものの件数も過去最多になったものの、1件あたりが安価となり、利益が少ないため、葬儀会社の売上高は減り、倒産件数も過去最多となりました。大手スーパーのイオンが葬儀業に参入したり、ネット葬儀社の開業の増加も葬儀業界の競争を激化させており、単価を安くしている原因です。
その上、人手不足が重くのしかかるため、葬儀会社は従業員が働ける日になるべく多くの件数を詰めこむしかありません。時間をかけて丁寧にお葬式を行うというよりも、次から次にくる葬儀をどんどんこなしていくしかなく、結果的にミスが起きやすくなったり、雑なところが目に付くようになっているのです。