
トランプ・トレードはどこへ?
ドル安誘導「陰謀論」が浮上
市場センチメントは、トランプ米大統領の気分と同様に、実に移ろいやすいものだ。昨年10月あたりから今年1月半ばにかけては、トランプ第2次政権が始まれば、米国の景気とインフレが加速し、米金利とドルが上昇するという「トランプ・トレード」に全世界の投資家が便乗し、実際にドルが全面高となった。
もっとも、トランプ氏が大統領に就任した途端に、トランプ関税の負の側面が注目され始めた。そして、米金利やドルは低下・下落に転じ、最近では過大評価されたドル高の是正に向けてトランプ米政権が国際協調を目論んでいるという説まで取り沙汰されている。
この説によると、トランプ政権がドル高是正を目論む動きは、1985年のプラザ合意に至る状況と似ていることから「プラザ合意2.0」と呼ばれたり、トランプ大統領が重要政策を決める場所とされる米フロリダ州の別荘名に因んで「マールアラーゴ合意」と呼ばれているようだ。
トランプ政権がドル高是正を目論んでいるとの見方は、米経済諮問委員会(CEA)委員長候補に指名されているスティーブン・ミラン氏が昨年11月に執筆した論文が基になっているようだ。同論文では、米国が経常赤字を計上してもドルが世界の基軸通貨であることからその価値が上昇し、米製造業の負担となっていると指摘されている。
そこでドル高を是正するために、関税に続いて貿易相手国と「多国間協定」を締結してドル安誘導を図り、ドル売り介入によって外貨準備が減少した協定参加国には、残った外貨準備における米国債の満期を100年程度に長期化させ、米長期金利の上昇を抑制するべき、などと主張されている。