絶頂か崩壊か 半導体AIバブル#8Photo by Reiji Murai

半導体の後工程のサプライチェーンで存在感を強めている半導体材料メーカーがある。新潟県を本拠に電子部品材料を手掛けるナミックス(新潟市)だ。AI(人工知能)に使われるGPU(画像処理半導体)やCPU(中央演算処理装置)を保護する液状封止材の出荷が好調で、台湾積体電路製造(TSMC)との取引を拡大している。地方の小さな会社が巨大なグローバル大半導体メーカーと渡り合える秘密は何か。特集『絶頂か崩壊か 半導体AIバブル』の#8で、快進撃を続ける小田嶋壽信社長を直撃した。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

電卓時代から半導体材料に参入
パソコン、スマホに続いてAIで花開く

――ナミックスは1946年に塗料会社として創業しましたが、半導体材料に進出したのはいつごろだったのでしょうか。

 70年代後半にシャープが名刺サイズのカード型電子式卓上計算機を開発したのがきっかけでした。お付き合いのあったシャープの技術者から、電卓の小型化のため、防湿・防じんの機能を持った接着剤でIC(集積回路)チップを基板にじか付けしたいというリクエストがあったのが始まりです。

 われわれは、それ以前も電子部品のコーティング材料を手掛けていたのですが、より純度を上げて微細な所に流れ込む材料を開発して今の封止材の原型を作り上げました。それが80年代の初めごろにビジネスになり、シャープでは電卓以外にも液晶ビューカムのICチップの接着にも使われるようになって広がっていきました。半導体パッケージ向けの封止材ビジネスは、パソコンからスマートフォンの時代に入って一気に花開いたビジネスです。

――AI時代になって半導体パッケージが高度化しており、封止材の需要がさらに拡大しています。

 半導体の種類も用途も拡大してきていますね。パソコンに使われるCPU(中央演算処理装置)だけではなく、グラフィックをきれいにするためのGPU(画像処理半導体)が登場しゲームなどに使われるようになりました。それがAIにも応用されてさらに市場が拡大しています。AI半導体の顧客はゲームの時代からお付き合いがあるので、AI時代になってからの関係ではありません。

 電卓からパソコン、スマホ、ゲーム、AIへと半導体の用途が広がる中で、自分たちができることや得意なこと、そして顧客から求められることを懸命にやってきた結果、長い時間でお付き合いする顧客の幅が大きく広がってきました。さらに最近は、AI半導体チップのパッケージが積層化・集積化していて、一つの半導体チップでも封止材が使われる箇所が増えています。

電卓の半導体チップのパッケージ材料から始まり、パソコン、スマホの時代を通じて世界中に大手半導体メーカーの顧客を拡大したナミックスは、AI半導体向けの封止材でさらにチャンスを広げようとしている。次ページでは、大手顧客との共同開発の成果、国内工場の増強投資、台湾積体電路製造(TSMC)との取引拡大など、サプライチェーンで存在感を放つ秘密について余すことなく語ってもらった。