代わりに起きているのが、「社内ガラパゴス化」とも呼べる現象です。

 新規プロダクトの創出は、大企業の持続的な成長にとって重要です。しかし多くの企業で、市場ではなく社内のルールや評価基準に最適化され、外部の競争環境とはズレた進化を遂げるプロダクトが生まれ続けています。この社内ガラパゴス化は、大企業のプロダクト事業の成長を阻む最大の課題です。

 なぜ、なぜこのような事態に陥る企業が多いのでしょうか。社内ガラパゴス化の原因には、2つの理由が挙げられます。1つは「既存事業の重力」、もう1つが「自己カニバリゼーション恐怖症」です。

「既存事業の重力」が
プロダクトの成長を阻む

 大企業の新規プロダクト開発はゼロからの挑戦ではなく、既存のブランド力や営業チャネル、リソースを活用できる点で、スタートアップに比べて圧倒的に有利です。しかし多くの大企業では、新規プロダクトを立ち上げる際、売上評価、投資配分、営業戦略、意思決定フローなど、既存のやり方に準拠することを求められます。

 それが足かせとなり、「既存事業の重力」に引きずられて、独立した評価や投資ができなければ、新規プロダクトが本来持つ可能性を発揮できないという問題が生じます。

 大企業では短期的な損益計算書(PL)による評価が一般的です。そして新規プロダクトも同じ価値基準に組み込まれ、「数年で黒字化」といった短期目標を課されがちです。収益目標が短期的すぎて、新規プロダクトに十分な投資ができず、スケールする前に失敗するケースはよく見られます。