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【精神科医が教える】無意識にやっている…悲しみの底で心をもっと苦しめることPhoto: Adobe Stock

喪失感にはいろいろな種類がある

 今日は「喪失感との向き合い方」というテーマでお話ししたいと思います。

 喪失感といっても、モノや立場、金銭、大切な人との関係など、さまざまなものがあります。今回は幅広く、あらゆる喪失感への向き合い方についてお伝えしたいと思います。

 私自身も、大切なものを失ってきた経験があります。その時は「もう、どうにもならない……」と思い、苦しんだこともありますが、時間が経つことで、少しずつ心が落ち着いてくることも確かです。

喪失感を「埋めよう」としない

 喪失感と向き合う上で、最も大切なことがあります。それは、「その穴を無理に埋めようとしないこと」です。

 人は大切なものを失うと、その空いた穴を別のもので埋めようとする傾向があります。しかし、その穴は他の何かで埋まるものではありません。

 無理に埋めようとすると、新しいものと失ったものを比較してしまい、「やっぱり違う」と苦しむことになります。ですから、その穴はそのまま、ぽっかりと開けておいていいのです。

穴はそのまま、別の価値が足される

 時間が経つと、穴はそのまま残りながらも、別の価値が人生に足されていきます。

 たとえば、新たに大切な人や経験ができたとき、その存在に意識が向かうようになります。しかし、それは過去の喪失を「埋めた」わけではなく、別の新しい価値が「加わった」だけなのです。この違いをきちんと認識しておくことが大切です。

 新しい大切なものは、失った存在の代わりではなく、それ自体が独立した大切な存在です。それによって、気持ちが少しずつ満たされていくことはあっても、「埋める」という感覚ではありません。

喪失感はそのまま受け止めていい

 大事なものを失った喪失感や切なさは、無理に消そうとしなくてかまいません。そのまま、あるがままで受け止めることが大事です。

 もしそれを別のもので補おうとすると、うまくいかないだけでなく、逆に依存的になってしまったり、より苦しくなってしまうこともあります。

「これはもう埋まらないものなんだ」と割り切ることで、少し心が軽くなるかもしれません。そして、時間とともに、また新しい大切なものが生まれれば、自然とそちらに意識が向いていきます。そのプロセスを信じて、自分のペースで過ごしていただけたらと思います。

※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。