ノートとえんぴつを手にした人写真はイメージです Photo:PIXTA

認知症やアルツハイマーは高齢者の病気だと思われがちだが、脳の老化は40代後半からすでに始まっている。脳を鍛えるために有効な方法は、「鏡に全身を映して姿勢を正す」「あえて遠回りをして家に帰る」など、日常の中で簡単に習慣化できることばかりだ。脳内科医である著者が、今日からできる脳の健康法を授ける。※本稿は、加藤俊徳『「名前が出てこない」「忘れっぽくなった」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

脳を成長させるために
重要なのは「姿勢を正す」こと

 人間の身体の中で最も酸素を必要としているのは、脳です。

 脳の神経細胞は常に血液から酸素を受け取って呼吸しています。酸素が供給されないと神経細胞は酸欠になって、5分程度で壊死します。

 そのため、神経細胞が酸欠状態にならないよう、身体に取り込んだ酸素量の約30%が脳で消費されているのです。

 また、酸素は神経細胞の代謝を促進するエネルギー源でもあります。脳に十分な酸素が行き渡ることで、脳は成長し、健康を保てるのです。

 このように、脳の成長のためにも酸素は欠かせません。

 人間は呼吸をすることで酸素を吸っていますが、生活の中で効率よく脳に酸素を取り入れるには、どうしたらいいでしょうか。それは、姿勢をよくすることです。

 大部分の人は歳を重ねると前かがみの姿勢になっていきます。すると、呼吸が浅くなって脳に十分な酸素が行き渡らなくなります。

 また、悪い姿勢によってこりや痛みが生じると、思考系脳番地(図-1)(編集部注/脳番地とは、細胞の働きの違いによって脳を地図に見立て、役割ごとに約120に区分し、8つの番地に振り分けたもの)に負担がかかり、より多く酸素を使ってしまうことになります。

図表:8種類の脳番地同書より転載 拡大画像表示

 そこでおすすめしたいのが、部屋に全身が映る鏡を置くこと。顔の表情やメイクの仕上がり具合だけでなく、立ち姿を毎日チェックすることが大切なのです。

 鏡の前に立ち、肩甲骨を背中の真ん中に寄せて胸を張り、お腹に力を入れてみてください。鏡に映ったあなたは、とても若々しく見えるに違いありません。

 よい姿勢を保つには、腹部のインナーマッスルの力が必要です。体幹を鍛えれば、前後左右のバランスも整うので、転倒のリスクも減るでしょう。

空間認識力を高めるためには
部屋の片付けと掃除が効く

 部屋が散らかっていると、いざというときに大事なものが見つからないということがあるでしょう。また、お客さんを招くことも面倒になって、コミュニケーションの機会が失われてしまうかもしれません。