
40代半ばを過ぎると増えてくる、ちょっとした「もの忘れ」。よくあることだとスルーしがちだが、それは脳の衰えが始まっている重要なサインなのだ。しかし安心してほしい。脳内科医の著者によれば、何歳からでも脳は鍛えることができるのだという。脳の老化度を抑え、成長力を高める方法を伝授する。※本稿は、加藤俊徳『「名前が出てこない」「忘れっぽくなった」人のお助けBOOK』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。
「もの忘れ」が増えてきたら要注意
脳の衰えの兆候が出ている!
40代半ばを過ぎると、若い頃より“もの忘れ”が多くなったり、仕事で小さなミスが続いたりするなど、日常のさまざまな場面で脳力の低下傾向を自覚することが多くなってきます。
そんなちょっとした不安を抱えながらも、「気のせい」とか「誰にでもあること」とスルーしてしまっている人も多いでしょう。
しかし、どんなささいなことであっても、不安や心配があるなら、そこにはもう脳の衰えの兆候が出ていると思ったほうがいいのです。
たとえ「財布を忘れた」「約束を忘れていた」などの“うっかりもの忘れ”だったとしても、その頻度が高くなってきたら、最終的に認知症につながる脳の衰えの兆しだと疑うべきでしょう。
もっとも、そうした“うっかりもの忘れ”が自覚できるうちは、まだまだ大丈夫。もの忘れが多くなるのは、脳が正常な状態ではないということを示すサインではありますが、自覚できるうちはまだ端境期といえるからです。
これは、下の図-1でいうならSCD(自覚的認知機能低下)までの状態。MCI(軽度認知障害)以降になると、そもそも、もの忘れしている自覚もない場合がほとんどですから、脳の機能を回復させることは難しくなります。
当然、アルツハイマー型認知症と診断されてしまうと、進行の程度にかかわらず、脳はほぼ成長しません。
したがって、少しでも脳の衰えを感じるなら、もの忘れが多くならないよう、自覚があるうちに脳を鍛える対策をすることをおすすめします。

脳は鍛えれば
何歳からでも成長できる
私はこれまで脳内科医として認知症や発達障害の研究に携わり、1万人以上のMRI脳画像を分析して診断・治療を行ってきました。その結果、明らかになったのが「脳は何歳になっても成長する」ということ。つまり、脳を鍛えるのは歳をとってからでも遅くないということです。
もの忘れが始まるのはだいたい40代後半からとされています。これは、記憶に関わる「海馬」という脳のほんの一部分に老化が現れただけで、脳全体が老化したわけではありません。
もともと、脳には一生かかっても使いきれないほどの数の神経細胞があり、私たちが使っているのはそのごく一部分。使われていなかった部分の神経細胞を覚醒させていけば、脳を成長させることも十分に可能なのです。