そのため店の店員がお釣りを丁寧に数え、一円の間違いもないよう几帳面に確認しながら手渡しする様は、崇高な儀式のようにも、エンターテイメント的にも感じられるのだといいます。同時に、少し前まで現金を使っていた世代にとっては、懐かしさを誘うのも事実。

 もちろんこれは、彼らが日本の現金主義を喜ばしく思っているということでは決してありません。インバウンド客を呼び込みたいならキャッシュレスが必須条件であることは間違いないですし、何事もクイックさを最重要視するので、選択肢がある場合は迷わずクレジットカードのタッチ決済一択です。

 でも、どんな品物も欲しいとなったら迷いなくゲットする富裕層にとって、紙幣や硬貨を自ら手にして買い物をするという行為は、母国での生活においては忘れられがちなお金の有り難みを実感させてくれるという、思いもよらぬ副産物も生み出しているようです。

 少し前まで訪日観光客にとって日本は最新のテクノロジーを享受する場でもあったのですが、その立場は逆転。昭和ブームが海外旅行者にまで広がっていることにも共通するのですが、良くも悪くもそのレトロさやアナログさが、今の日本の魅力にもなっているのです。

 ちなみに硬貨で最も人気があるのは、真ん中に穴が空いた5円玉と50円玉。海外土産に困ったらぜひ。

招き猫写真はイメージです Photo:PIXTA

百貨店での感動ポイントとは?
ラッピングが神道の学びとなる

 百貨店やショップでしばしば見られるラッピングにも、富裕層が感動するポイントが隠されています。まず、あの箱や商品に四隅をピッタリと添わせて、指先を使って手早く折り目をつける技術はもはやアートとの呼び声が高いです。確かに、思い返せば海外では買ったモノを、時に乱雑に袋に入れて終わりというパターンが多いですよね。

 しかし心に残るのは、テクニックの素晴らしさだけではありません。