アクティビティーの終了後、お家も見学させてもらうことに。そこで、一家が最も興味を示したのは、趣のある日本庭園でも、歴史を感じさせる茶室でもなく、居間の片隅に控えめに鎮座していた仏壇でした。中でも、年季の入った過去帳(故人の名前や命日が記載されている蛇腹式の手帖)に釘付けで、明らかに体験したアクティビティー以上の前のめり具合だったという(笑)。
宗教的には、私のゲストのほとんどがキリスト教かユダヤ教です。ユダヤ教徒は民族間のコミュニティーを大切にしますし、何よりも富裕層は家族や親族の絆が深い。
仏教徒でありながら八百万の神を敬うという私たちの宗教観は驚きの対象ではあるのですが、先祖を祀り、仏壇という目に見える形で継承する日本人の感覚に、温かみと親近感を覚えるようです。
加えて家という日常の場に、先祖代々の名前が書かれた、古くていわくありげなノートが、さも当然のように保管されている。そんな“日常の中の非日常”が心に響いたのでしょう。手書きの毛筆や、その墨の掠れ具合がZ世代にとってはビジュアル的にも「クール」だという側面もあります。

現金文化はもはやエンタメ
日本はノスタルジーを感じる場所に
仏壇のエピソードに限らず、富裕層の旅行者は日本の日常生活を、私たちとは全く異なるアングルと解像度で見ていると感じることが多々あります。
買い物のシーンを思い浮かべてみてください。昨今、日本でも現金以外の決済の選択肢が増えてきていますが、「CASH ONLY」を掲げる店もまだまだ多い。一方、欧米の先進国では貨幣の廃止論が上がっている国もあるほど、現金を使う機会はほぼ皆無です。