
市場のベテランたちが集まると、過去の印象的な暴落がよく話題に上る。2020年、11年、08年、1998年、あるいは年配者であれば87年に、自分がどこにいたかという話だ。先週の出来事もその仲間入りを果たすことになるだろう。投資家が米国市場から逃げ出した時、あなたはどこにいただろうか。
先週の市場の動きは取引をしようとした人々にとっては楽しいものではなかったが、振り返ってみれば興味深い出来事が満載だった。株式市場は、2日間の下落としては過去最大の下げ幅、そして1日の上昇幅としては史上まれにみる大きさを記録し、投資家を翻弄(ほんろう)した。一方、米ドルは急落し、米国債は一段と深刻な問題の警告サインを示した。
しかし本当に目立ったのは、一連の動きの組み合わせ、つまり米国資産全般からの逃避だった。株式・債券・ドルがすべて同時に売られたのだ。
「トゥルース・ソーシャル」(ドナルド・トランプ米大統領のソーシャルメディア)への投稿を受けてデイトレーダーが売買するだけでなく、もっと多くのことが起きていた。将来に備えたい投資家は、今回起きたことの背景にある三つの要因について考える必要がある。それは貿易、債務、脱米国化だ。
貿易――というよりもむしろトランプ大統領による貿易への攻撃――が、売りの基本的な理由となった。中国以外の国々に対する奇妙な計算方法による追加関税の一時停止は、週の半ばに安堵(あんど)をもたらしたし、11日夜に発表したiPhone(アイフォーン)などの電子機器に対する相互関税除外は、一時的な安心感をさらに与えるだろう。しかし投資家は、太平洋を挟んだ貿易戦争の報復合戦による損害の算定作業にすぐに戻った。これは、米国が貿易黒字を計上している国々に対してさえ課す10%の基本関税に加えてのことだ。
ウォール街のストラテジストが景気後退の確率を引き上げる中、株価は当然ながら下落した。S&P500種指数は週初めより高い水準で11日の取引を終えたが、前週の関税発表時の水準からは大幅に下落したままだ。注目すべきは、株価が反発する中でもドルと米国債の売りが続いたことだ。