公共ライドシェアは交通空白と高齢者の運転リスクの解消につなが るか
高齢化による人口減少が加速する日本の地方部。65歳以上の4人に1人が食料品の購入に困難を伴い、乗合バスや地域鉄道の事業者の赤字率は100%に限りなく近づいている。公共交通の需要が減少し、担い手の不足・高齢化により移動サービスを拡充することも極めて難しくなっている。
全国の約70%以上を占める人口10万人未満の自治体に対し、住民サービスのDXと職員業務のDXの2軸で事業展開をしているパブリックテクノロジーズの代表取締役COO 杉原裕斗氏は、こうした地方部の移動サービスの問題を解決するには、「移動需要をいかに効率よく限られた交通リソースとマッチングするか、そして住民参加によって交通の供給をどれだけ増やせるかがカギとなる」と指摘する。

代表取締役COO 杉原裕斗 氏
(上記肩書きはイベント開催時。2025年4月1日付で、取締役執行役員 副社長に就任)
慶應義塾大学在学中にマイメリット創業。同大学卒業後、2020年5月、経営統合を経てEXx(エックス)に参画。2023年10月、パブリックテクノロジーズに商号変更。「暮らし続けたいまちをつくる」をミッションに、AIオンデマンド交通/公共ライドシェアの運営を中心とした、地方自治体のDXに取り組む。
その解決策の一つとして、杉原氏は「ライドシェア」を挙げる。日本でも2023年に解禁されたライドシェアは、「日本版ライドシェア」と呼ばれる、タクシー会社が主体となって一般ドライバーが自家用車を使って有料で客を運ぶサービスがある。さらに、地方自治体やNPO法人等が運行主体となる「
同社はいち早く、石川県小松市で公共ライドシェアの導入支援を行った。同社は配車アプリの開発や運営を担当し、木〜土曜日の17:00〜24:00のタクシーが不足する週末・夜間に運行している。1日に約5〜6件、7〜8人が利用しているという。
杉原氏は、「現状の課題として周知の難しさ、エリアや時間帯の制限などが問題点として見えてきたこと、さらに今後の取り組みとして、2024年度の成果を踏まえて昼間帯への時間拡大や運転代行事業者との連携など、さらなる地域浸透に取り組むとともに、このライドシェアが交通の一つのパーツとして力を持っていけるのかを議論しているところ」であると言う。小松市をはじめ、現在、公共ライドシェアは全国35の自治体で導入されている。

同社はまた、茨城県行方市でAIを活用して効率的に配車し、利用者予約に対してリアルタイムに最適な配車を行うシステムの「AIオンデマンド交通」を実装した。その結果、市バス・乗合タクシー関連予算を約15%削減する実績を出している。千葉県香取市でもAIオンデマンド交通に加え、路線型のバスが予約に応じて運行する「予約運行型バス」
同社が先鞭をつけた公共ライドシェアが全国規模で浸透することにより、交通空白の解消だけではなく、高齢者特有の交通事故や、自動車免許を返納しない問題などにおいて、解決策の一つとなる可能性が期待できる。
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次回記事では、モビリティによる地域活性化を実現した栃木県宇都宮市の次世代型路面電車(LRT)、山梨県の空飛ぶクルマによる「移動革命」の取り組み、そして白熱したラウンドテーブルディスカッションについてリポートする。
◉構成・まとめ|石澤理香子、久世和彦 ◉撮影|奥西淳二