ラストワンマイル領域で社会課題解決と未来のインフラ構築
ドライバー不足が深刻化の一途をたどる物流業界。特に、物流倉庫から顧客に商品を届ける最後の区間である「ラストワンマイル」は、複合的な課題が山積している。セイノーラストワンマイル執行役員 経営企画室 室長の丸山隆史氏は、ラストワンマイルの物流の課題を都市部と過疎地域に分け、それぞれの課題解決の取り組みを説明した。

執行役員 経営企画室 室長 丸山隆史 氏
2005年3月、敬愛大学経済学部を卒業後、2006年に地区宅便へ入社。ダイレクトメール配送を専門とする同社において、営業職として顧客開拓、提案営業、取引先との関係構築に17年間従事。2021年4月に執行役員に就任。同社は2022年8月にセイノーグループの一員となり、2024年4月1日からは新設されたセイノーラストワンマイルの経営企画室室長に着任し、ラストワンマイル領域全体の課題解決に取り組んでいる。
都市部では、eコマース市場の急速な拡大で宅配の取扱個数が激増した結果、ドライバー不足が顕著となっている。さらにドライバーの高齢化や時間外労働の制限により、運べないリスクが増大している。同社はその解決策として、置き配サービスや小荷物をダイレクトメールと一緒に投函するサービスを展開するなど、持続可能な物流モデルを実現している。
置き配サービスでは、商品を一括して幹線輸送することで、
ダイレクトメールや小荷物の配送分野では、
さらに、このスロー物流の担い手として、
一方、過疎地域では、物流コストの高騰、配送効率の悪さが課題となっている。特に山間部や離島では配達網の維持自体が厳しい状況になっているため、同社では解決策としてドローン配送などの実証実験を開始。山梨県小菅村では、ドローン配送のほか買い物代行、共同配送といったサービスを提供し、住民の買い物負担の軽減、バス運送コストの削減や中山間地域の物流維持といった効果を検証した。

また、同社の親会社であるセイノーホールディングスがドローン物流の会社に出資し、地域社会の次世代インフラ事業である「SkyHub®」を展開。物流のノウハウとドローンを組み合わせ、市街地はトラック、農村部ではドローンを活用し、地域物流の非効率を解決しようと取り組んでいる。ドローン配送は、これまで32の自治体で1000回以上の実証実験を実施した。
丸山氏は、「ドローン配送が展開できれば、過疎地域の課題解決だけでなく、今後の物流全体の効率化に大きな可能性を秘めていると実感しているが、ドローン1台での積載量が限られるという課題もあり、遠距離かつ集落からも離れて暮らす家などに対するアプローチなどを模索している」と語る。
免許返納で買い物に行くことが難しくなった高齢者、田舎に住む両親のために食事を定期的に届けたいといった都市部住民に向けた「買い物弱者」の対策、物が届かなくなったら自治体としての存続が危ぶまれる過疎地域の対策など、ラストワンマイル領域で物流の社会課題と未来のインフラ構築を同時に解決することを目指す同社の先進的な取り組みが今後も注目される。