トランプ関税の目標、その代償を払うのは誰?Photo:Justin Sullivan/gettyimages

 ドナルド・トランプ米大統領が本当に望んでいるものを解説すること自体が一大産業化しているが、それが世に出るや否や間違っていることが判明する場合も多い。しかし、トランプ氏の関税政策について明らかなことが二つある。貿易赤字の削減と、米製造業再建のための投資を望んでいることだ。同氏がこれらの目標を達成できるかもしれないと考える真の信奉者は、その結果として他に何が必然的に起きるかをよく考えるべきだ。

 出発点は国際収支だ。これは一国の経済における貿易と投資の最も広範な指標である。この二つの側面はバランスが取れていなければならない。すなわち、貿易の流れいくつかの項目を集計する経常収支と、株式や債券などを購入したり工場に投資したりするために流出入する資本や資金を測定する資本・金融収支とのバランスだ。

 米国は長年にわたり、輸出をはるかに上回る輸入を行ってきた。これが貿易赤字だ。国際収支のバランスを保つには、赤字額に見合った資本の流入が必要となる。これは主に、株式や米国債などの資産を外国人が購入することによってもたらされてきた。

 トランプ氏の計画はこうした動きを混乱させるだろう。貿易赤字の縮小は、資本流入の縮小を意味する。

 トランプ氏が執着しているのは財の赤字であり、これを削減するには二つの方法がある。

 第1の方法は、財とサービスの貿易赤字全体は変わらないものの、サービス――トランプ氏が関心を持っているようには見えないが、黒字を計上している――が、製造業のために犠牲になることだ。要するに、金融界とハイテク業界を傷つけて、工場労働者層に利益をもたらすことだ。しかし、これには国内の税制と規制の変更が必要となるだろう。

 財の赤字を縮小させる第2の方法は、貿易赤字全体を削減することだ。それは国外からの資金流入が減少することを意味する(国際収支はバランスが取れなければならないことを思い出してほしい)。国外からの資金流入が減り、(関税によって輸入品の競争力が低下するため)製造業への投資が増加すると、米国は新たな組立工場やクリーンルーム、さらには低賃金で劣悪な労働環境の作業場に資金を供給すべく、より多くの貯蓄を提供しなければならなくなる。