陰謀論にハマった人の末路
――確かに、そうやってつながれると抜け出しづらくなりそうです。
益田 そう。だからこそ、ハマってしまうと抜けにくい。
そして、そういう人たちはマルチ商法に勧誘されたり、宗教に取り込まれたりもしやすい。
宗教も最初は良くても、途中からは無償労働がどんどん増えたりして、問題が大きくなっていくことが多い。
陰謀論にハマる人って、「スピリチュアルに傾きやすい」傾向もあるんですよ。幽霊を信じやすいとか。ちょっと妄想的になりやすい体質の人たちもいて、精神科ではそれを「精神病性機能」といったりもします。
これは特定の人だけでなく、世の中の多くの人にあるある機能です。その程度が大きい人もいれば、小さい人もいる。
でもそれって、ある種の才能というか、感受性の強さでもあるんです。芸術的なセンスとして表れることもあるので、完全に悪いこととも言えない。
ただ、「情報をどう扱うか」のバランスが大事なんですよ。そういう人たちって、人間的には面白いけど、情報の取り込み方が偏ってしまうと危ない。
――陰謀論にハマらないようにするためには、どうしたらいいんでしょうか?
益田 孤立しないことです。そして、「世の中は複雑だ」という前提に立つこと。
全能なるものは存在しないし、分からないことを分からないまま受け入れる「無知の知」の姿勢が大事ですね。
あとは、なんでも白黒はっきりつけようとしないこと。「こうに違いない」と決めつけるんじゃなくて、「もしかしたら違うかもしれない」と思える柔軟さ。
それが、陰謀論に限らず、いろんなトラブルから自分を守ってくれると思います。
早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医
防衛医大卒。防衛医大病院、自衛隊中央病院、自衛隊仙台病院(復職センター兼務)、埼玉県立精神神経医療センター、薫風会山田病院などを経て、早稲田メンタルクリニックを開業。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数60万人を超える。患者同士がオンライン上で会話や相談ができるオンライン自助会を主催・運営するほか、精神科領域のYouTuberを集めた勉強会なども行っている。著書に『精神科医が教える 親を憎むのをやめる方法』(KADOKAWA)、『精神科医の本音』(SBクリエイティブ)、『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!』(扶桑社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 メンタルの話 メンタルの悩みとギモンを専門医がすべて解決!』(日本文芸社)などがある。