トランプ政策の影響、経済指標には未反映Photo:Michael M. Santiago/gettyimages

 ニュースやソーシャルメディアをチェックせず、経済指標だけを通して世界を観察していたとしたら、1月に米国で政権交代があったとは想像もつかなかっただろう。

 ドナルド・トランプ米大統領による移民の強制送還、関税、連邦政府の人員削減、資金提供の停止は絶え間なくニュースを生み出し、信頼感を損なったが、意外にも経済にはほとんど影響を与えていない。雇用、支出、インフレはジョー・バイデン前政権下とほぼ同じような状況に見える。

 政策のニュースと経済データのこうした「ずれ」は大きな混乱を招く。ユナイテッド航空は、経済環境が「予測不可能」だとして、過去1週間に二つの業績見通しを発表した。景気後退を想定したものと、想定しないものだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が行った調査では、エコノミストは今年の雇用の伸びが大幅に鈍化し、インフレ率が急上昇すると予想している。しかし、現時点ではどちらの兆候もほとんど見られない。過去2カ月間の雇用者数の伸びは平均17万3000人で、その前の6カ月間とほぼ同水準だ。失業率は平均4.2%と、その前の6カ月間より0.1ポイント高い。総合インフレ率を示す消費者物価指数(CPI)と米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する基調的なインフレ指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、いずれも平均で0.1ポイント低下している。

 イーロン・マスク氏は以前、連邦支出を2兆ドル(約285兆円)削減できると述べていた。同氏が率いる政府効率化省(DOGE)は現在、より控えめな1550億ドルを削減したと主張している。しかし、第2次トランプ政権発足から80日間の連邦政府支出は、前年同期と比べて1540億ドル増加していたことが、WSJの分析で明らかになった。