米国株・国債・為替の「トリプル安」は長期化⁉︎深刻なドル資産“信認低下”3つの要因Photo:Adam Gray/gettyimages

トランプ関税で米の実行関税率20%以上に
世界貿易縮小は米国にもマイナス効果

 米国金融市場は4月に入って混乱が深刻になりつつある。債券安(金利は上昇)、株安、為替ドル安のいわゆる「トリプル安」に見舞われている状況だ。

 これは通常はその国の資産から資金が逃げているときに見られ、4月2日にトランプ政権が相互関税の具体案を発表した時点から潮目の変化が生じているように見える。

 だが、その裏にはより広範な不透明感があるように思われる。米国経済の動き方をこれまで規定してきた仕組みや慣行が流動化するなかで、ドル建て資産に対する安定した期待形成がされなくなっているというのが実情に近い。

 その要因としてはまずは言うまでもなく通商政策だ。トランプ大統領の関税劇場は大荒れとなっている。相互関税は、全貿易相手国を対象にした一律10%関税のほか、日本など約60カ国・地域には税率を上乗せするもので、その税率の高さ、対象の広範さ、税率算出根拠の粗雑さなど、多くの点で世界に大きな衝撃を持って迎えられた。

 この相互関税が公表された時点で既に実施や発動を宣言済みのメキシコ・カナダへの25%関税や自動車、鉄鋼アルミ関税などの各種関税を加えて計算すると、米国の実行関税率は昨年の2.5%から20%超まで上昇することになる。これは20世紀初頭以来のレベルであり、ブロック経済化によって世界貿易が大きく収縮した1930年代の大恐慌期をも上回る(図表1)。

 この相互関税は、4月9日の全面発動のわずか13時間後に、中国を除く諸国に対して10%を超える部分の適用が90日間停止された。だが、実際のところ、米国への経済インパクトという面では、それほど大きく状況が変化したともいえず、スタグフレーション入りの懸念は払拭されないままだ。

 ドル資産の信認低下の要因はまだほかにもある。