
トランプ関税の根源
米財政状況の行き詰まり
トランプ政権が打ち出した関税政策を貿易赤字に対するトランプ大統領の気まぐれと見るべきではない。また関税政策を製造業の米国内への回帰や雇用を取り戻すという意味だけで考えてはいけない。
関税政策の根源には、米国の財政状況が行き詰まりつつあること、言い換えれば、米国の信用が保てなくなりつつあることがある。それは唯一の大国だった米国の地位が、中国に脅かされつつあることも意味する。
米国が陥っている財政不安から回復するため取られているなりふり構わぬ行動は、世界の秩序も変えようとしている。既に米国は、WTOやWHOから脱退し、パリ協定から離脱した。関税政策も含め、これまでの多国間協力を基盤とした規則は壊れつつある。特に、貿易に関しては、多国間貿易体制の弱体化を招き、自国の経済利益を優先する秩序へのシフトを示唆する。
今回の事態はニクソンショック(金本位制の停止)とプラザ合意(為替レートの協調介入などによる調整)と同じ系統の問題である。米国の問題への対応策である。
ニクソンショックの背景には、ベトナム戦争や社会保障拡大による財政支出拡大で国際収支が悪化し、ドルへの信認が低下したことがある。プラザ合意の背景には、インフレ抑制策としての高金利政策で米ドルが急騰し、米国の輸出競争力が低下し、貿易赤字(特に日本に対し)が膨張したことがある。
そして今回のトランプ関税ショックの背景には、米国企業のファブレス経営化が進む中で米国の貿易赤字の拡大(特に中国に対し)が深刻化し、経常赤字、対外純債務が拡大し、米国が耐えきれなくなってきたことがある。
今回、米国が耐えきれなくなっているのは、最終的には財政である。このままいくと、米国の財政破たんが見えてくる。