ナビゲーターの真髄は
走る前の「準備」にある

 ラリーにおいてナビゲーターというと、最初に思い浮かぶのが「レース中に隣で指示を出す」シーンです。

 ペースノートというメモ書きに従って、次のコーナーに何速でどれくらいのハンドルの切れ角で突っ込んでいくのか、というような指示を出します。ドライバーは、その情報を信じて、正確なハンドルさばきとアクセルワークで車を操ります。

 テレビなどでこうしたシーンが放映されるため、ナビゲーターの主な仕事はこう見えるわけです。

 しかし、ここで使っている「ペースノート」の内容が間違っていたら、そうしたナビゲーション・道案内が全くの的外れなものになってしまうということに、お気づきになったでしょうか?

 そうなんです。ナビゲーターの仕事は、「正確なペースノートを作る」というところにこそ、真髄があるのです。

 コースの下見をして、どんな角度のカーブなのか、その先のストレートはどれくらいあるのか、ギャップの状況を踏まえてジャンプする距離はどの程度になるか、そのためにはどれくらいの速度で入るのが適正か、また、路面のすべりやすさはどういうものか……こうした情報を正確に集めていかなければなりません。

 情報が間違っていれば、どれだけ当日頑張っても、成果は出ません。ドライバーの運転技術がどれだけ高くても、勝利を手にすることはできません。

顧客のナビゲーターになるために
「ペースノート」をどうつくるか

 営業も同じです。顧客が走るルートを調べ、その状況を把握し、その道を最速で駆け抜けるためにどうすればよいか、を一緒に考えなければいけません。

 自社の商品・サービスは、顧客が最速タイムを叩き出すための道具です。その商品を売るのは、自社のためではなく、顧客の会社のため、顧客の会社の事業のためです。

 いかにして、顧客に商品を売り込むのか、と捉えてはいけません。顧客が成功するために自社の商品・サービスがいかに有用であるか、どのように役に立つのかを理解してもらうのです。