
EU、軍事支出の財政規律を緩和
ドイツの積極財政転換が契機に
ウクライナ問題で米国とロシアが、ウクライナや欧州の頭越しに停戦協議を開始、その一方で米国が欧州に対してウクライナ支援の負担や国防費の増額を求めるなかで、3月6日、ヨーロッパ理事会(EU首脳会議)は、フォン・デア・ライエンヨーロッパ委員会委員長が発表した「ヨーロッパ再軍備計画(ReArm Europe)」の方針を支持し、EU予算を担保とする加盟国向けの新たな融資制度の設置や、加盟国による防衛費の増額を可能とする安定成長協定(SGP)の財政規律の緩和について合意した。
合意を受けてヨーロッパ委員会が3月19日に明らかにした計画の詳細によると、加盟国は、2025年からの4年間、特定の軍事関連支出については、EUが定める財政規律基準から最大GDP比1.5%の乖離が可能となる。
また、EU予算を担保とする加盟国向けの新たな融資制度として、一定の条件の下で最大1500億ユーロの融資が可能となる「ヨーロッパの安全保障行動(SAFE)」が創設された。
EUの財政規律の緩和の合意に至る背景には、ドイツの働きかけがあったと報じられている(注1)。欧州債務危機などでも健全財政路線に固執してきたドイツが、積極財政へと大きくかじを切ったことが鍵になったのだ。
ヨーロッパ再軍備計画でのEU(欧州連合)の財政規律緩和での協調は、ロシアに対する欧州の安全保障強化だけにとどまらない可能性を持っている。