売れると分かっているミニバンをやめた理由は?

F:スライドドアではないし、ミニバンと比べると天井も低い。走りはこちらの方が良いけれども利便性では負ける。ミニバン志向の客をマツダは拾えないことになりはしませんか。いま、ミニバンを持たないマツダは、「やっぱりミニバンが便利で良いよな」という客が100%他社に流れてしまう。

柴:そうですね。一定数はミニバンに行ってしまう。

F:売れると分かっているのに、なぜミニバンをやめたのですか。

柴:我々も7年前までミニバンを持っていたからよく分かるのですが、あの土俵で勝負するのは得策ではないからです。

F:有り体にいえば、アル(ファード)・ヴェル(ファイア)、あるいはノア・ヴォク(シー)、セレナが強すぎるということですか。レッドオーシャン過ぎると。

柴:その通りです。ステップワゴンとノア・ヴォクとセレナ。あの手のミニバンの使い勝手は、間違いなく、ものすごく優れている。でもマツダがあえてその土俵に上って勝負しに行くのは賢明ではありません。

F:マツダの規模からすると……。

柴:そうです。会社の規模から考えてやっぱり難しい。アル・ヴェルの市場になると、日産さんは結局エルグランドの新規開発を長らくやっていませんし※、ホンダさんも前はやっていたけれども、今はラインナップから外している。もともとあのクラスの市場はエルグランドが切り開いたはずなんです。でも今はすっかりアル・ヴェルの独壇場になってしまった。「俺のクルマはアルファード」といえるほどのネームバリューとステータス性ができている。周囲の人も「あれはいいクルマで、いくらぐらいして……」ということまで分かっている。それが成り立つような世界観が構築されているんです。

F:つまりはブランドが確立している。アルファード強し、ですね。ベストカーか何かで、次期モデルのエルグランドのスクープが出ていましたが※。

※いずれもインタビュー時(4月上旬)。4月22日、日産は新型エルグランドを発表し、現在(4月24日時点)はティザー広告が出ている。