F:するといま現在、マツダはスライドドアのクルマを造っていない。

柴:OEM供給を受けている軽バンや商用車を“売って”はいますが、マツダが“造って”はいませんね。

F:いまのマツダのフィロソフィーには適合しないということですか?

柴:いや、それは違います。ボンゴフレンディとか、過去には良いクルマもたくさんありましたし、別にスライドドアを否定するものではありません。現状は造っていませんよ、ということです。ただ、おっしゃる通りスライドドアに大きなディマンドがあることは間違いありません。何らかの形で技術革新的なことを考えなければいけないという思いはありますね。

アメリカは「マッチョ」が正義、スライドドアはウケない

F:軽くて丈夫でしかも安価なスライドドア。これは難しそうです……。ちなみにアメリカでスライドドアのクルマはウケないのですか?

柴:正直、ウケません。アメリカではウケませんね。そもそも駐車場が広いから、横に気遣ってドアを開ける必要がありませんし。向こうでスライドドアのクルマは「サッカーマムが乗るクルマ」と言われてしまうことがありますので。

※サッカーマム(soccer mom):子どもをサッカーの練習や試合に送り迎えするお母さん。“良き母”というニュアンスがある一方で、“所帯じみている”というイメージも含まれる。

F:なるほど、サッカーマム。

柴:アメリカはマッチョ。とにかくマッチョなクルマがウケますね。

F:マッチョの象徴であるF-150※が一番売れる国ですからねぇ……と、スライドドアの話に寄ってしまいましたが、ラージ車両群を造るにあたってもう少し詳しく教えてください。特にミニバンとのオルタナティブについて。

※F-150:フォードのピックアップトラック。大きくてパワーがあってゴツい。