これはSUVだけでなくミニバンでも同様の傾向が見られます。人気のトヨタ アルファードはエントリーグレード以外がすべてキャプテンシート仕様になっているし、ファミリーカー色の強いノアもすべてのグレードで2列目キャプテンシート仕様が設定されています。現行型ノアの中古車を調べると9割が2列目キャプテンシート仕様になります。

フルフラットシートは人気だったが……

 90年代に多くの人がベンチシート仕様の3列シート車を選んでいた時は、多彩なシートアレンジが大きなウリになっていました。中でもフルフラットシートは3列シート車のマストアイテムで、1~3列目をすべてフラットにして巨大なベッドにできるものが人気でした。

 一方で限られた室内空間でフルフラット機構を持たせるためには、犠牲にしなければならないものもあります。その筆頭がシートバック(背もたれ)です。フルフラットの際に後ろの席の座面との間に段差をなくすためにはどうしても背もたれの高さを抑えなければならず、普通に座る時の快適性がスポイルされてしまっていました。さらにベッド(フルフラット)にした際の「フラット感」を重視して、シートとして使用する際にカーブで身体を支えてくれるサイドサポートが存在しないものもありました。

 多彩なシートアレンジは購入検討時にとても魅力的なもの。でも購入したクルマを実際に使い始めると、フルフラットにするのは年に数回遊びに出かける時だけだったり、そもそも後席までシートポジションが固定化されてほとんどシートアレンジを使わないという人がほとんどだったと思います。

「アルファードと同じ土俵では戦わない」マツダCX-80が「スライドドアなし」SUVにこだわる納得のワケCX-80の3列目席格納時。キャプテンシート仕様でも細いものなら長尺物を積むことができます(広報写真)

 それよりも2列目席がキャプテンシートかベンチシートかで大きく影響が出るのが、ラゲッジスペース容量でしょう。ベンチシートはシートバックを完全に前に倒してシートを格納して、荷室を最大限広くすることができます。でも座り心地を最優先に設計されたキャプテンシートは、シートバックを前に倒すことはできますが完全に格納することはできないので、ベンチシート仕様に比べると荷室スペースは狭くなります。

 今回CX-80を試乗した際も、フェルさんはセンターコンソール付きのキャプテンシート仕様車にどうやってスキー板を積むか、四苦八苦するシーンがあったようです。確かに長尺物を積む時は2列目もフラットにできたほうが便利ですが、日常での使い方を考えると後席も快適に座れるほうが便利。私としてはキャプテンシート仕様をおすすめしたいですね。

(AD高橋)