離職防止の解決法2
「仕事に意味付けする」

 2つ目は、仕事を「意味づける」ことです。「なぜこの仕事をするのか」「この経験が将来どう役立つのか」を問われたとき(否、問われなくても)がチャンスです。

 上司・先輩は高い視座から(もちろん「上から目線」という意味ではありません)、「あなたにとってこの仕事は一見これまでやってきたことと関係ないように見えるかもしれないけれど、実は今後必ず必要になる」「こんなスキルが身につく」と意義を説明するのです。

「意味づけ」を効果的に行うには、先輩社員への調査が役立ちます。「この部署で一番成長を感じられたのはどんな経験か」「その経験を通じてどんなスキルを得たか」を先輩たちに聞き、その対応関係を蓄積しておくのです。そうすれば、「この経験からこういうスキルを学べた先輩がいる」と具体的に伝えられます。

 また、成長のステップを細分化することも有効です。

 例えば営業職で「1年後に顧客に一人で提案できるようになる」という目標を立てた場合、それを3ヶ月ごとのスモールステップに分解します。

「最初の3ヶ月は先輩に帯同して、顧客に挨拶し、自社の会社説明を担当する」「次の3ヶ月は先輩がヒアリングしたクライアントのニーズをその場でメモに取り、それをもとに提案書のドラフトを作成する」といった具合です。こうすれば節目節目で成長をリアルタイムに感じられるようになります。

 これら「経験のデザイン」と「意味づけ」の両方が揃ってはじめて、若手社員は前編で述べたような「肩透かしリアリティショック」を感じたとしても、この仕事を「やってみて良かった」と感じ、会社に留まる可能性が高まるのです。

 とはいえ、この2つを実行するには非常に高度なマネジメント能力が要求されます。まず、管理職は、個々の部下の能力を正確に把握しなければなりません。そうしなければ「ちょっとストレッチした目標」を適切に設定することはできないからです。