高市政権、金融政策、AIバブル…米著名投資家が解き明かす投資家が直面する「6つの疑問」Photo:AFP=JIJI

株価は最高値圏にあるが、高市新政権、AIバブル、金利の行方など懸念は尽きない。米著名投資家ケン・フィッシャーは、多くの人が抱く不安こそが株価上昇の原動力となる「懸念の壁」であると喝破し、政治や金融政策、米製造業の国内回帰といったテーマに対し一般的な見方とは異なる視座を提示する。

投資家が直面する
6つの大きな疑問

 AIの過熱、金利、政治などに対する懸念が、この強気相場の「懸念の壁(wall of worry)」を築き、さらなる株価上昇の原動力となっている。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産25兆円超の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 2025年も10カ月が過ぎ、東証株価指数(TOPIX)は米国株や世界株と同様に史上最高値付近にある。これは喜ばしいことだ。しかし、大きな懸念と不確実性は依然として残る。多くの人が見過ごしていることについて理解を深めるため、投資家が抱いている6つの大きな疑問について考えてみよう。

 まず1番目は新たに選出された高市早苗首相についてだ。彼女は日本経済改革の新時代を到来させるだろうか。

 残念ながら、期待できないだろう。確かに、高市首相は減税、公共支出、円安の恩恵を公約に掲げ、故安倍晋三元首相の「三本の矢」を彷彿とさせた。しかし、この政権が何か大きなことを成し遂げる可能性は低い。

 なぜなら、まず第一に、これまでの過去の政権は、すでに手の届きやすい改革の果実の多くを摘み取ってしまった。高市氏は、より困難な改革を断行するほどの強い支持を得られていない。

 第二に、そして決定的に重要なことに、自民党による少数連立政権は膠着状態に陥り、大規模な法案の成立が阻まれる。これは一部の人々を苛立たせる一方で、他の人々を喜ばせるかもしれないが、近年の膠着状態の中で不規則に上昇してきた日本株にとって全く問題ない。なぜなら善意の改革は市場を助けるかもしれないが、意図しない悪影響のリスクも伴うからだ。