米国は「雇用なき成長」の時代へ、新しい均衡の上で問われる持続性と脆弱性Photo:Spencer Platt/gettyimages

強い成長と弱い雇用の乖離
当面続く「雇用なき成長」

 米国経済は「雇用なき成長」の時代に入った。GDPに象徴される経済成長の強さに比べて、雇用の増加ペースが低位に止まるというコントラストは続きそうだ。

 オックスフォード・エコノミクスは米国経済の成長力に自信を深めている。経済成長率は今年が2.0%となり、26年、27年は2.4%と底堅い推移を見込んでいる。この見方は市場予想(コンセンサス)と比べてかなり強気だ。

 その一方で、雇用(雇用統計の非農業部門雇用者数)の増加ペースは今年に入って勢いを失っている。3カ月移動平均で月次の振れを均すと、月間の雇用増加数は昨年暮れの20万人前後から今年8月は2万人弱、9月も6万人程度と大幅に減速している。

 米連邦制度準備理事会(FRB)の関心もインフレから雇用に急速にシフトし、9月、10月と予防的に利下げを行った。12月の利下げは意見が分かれ、雇用統計の公表が政府閉鎖で遅れる下で予断を許さない。

 米国経済の先行きとFRBの政策を予測するためには、こうした「雇用なき成長」の背景をきちんと理解したうえで、その持続性と内在するリスクを判断することが重要だ。

 強い成長と低い雇用の伸びの組み合わせという「雇用なき成長」は一時的なものではなく、中長期的にも常態化する可能性が高まっている。今後の米国の潜在成長率は、生産性の伸びへの依存度を一段と高めながら他国に対する優位性を維持し続ける。