中国経済は米中摩擦緩和で供給サイド主導の回復続くも、内需停滞とデフレ圧力が映す脆さPhoto;PIXTA

中国経済は足元で供給サイドがけん引役となり、鉱工業生産や米国以外への輸出が景気を下支えしている。一方、不動産不況や雇用回復の遅れ、節約志向の拡大で家計部門の力強さは欠く。米中摩擦はいったん緩和したものの、内需喚起策の効果は息切れしつつあり、需給ギャップ拡大によるデフレ圧力が強まる構図に変化はない。(第一生命経済研究所主席エコノミスト 西濵 徹)

供給サイドけん引の回復が続く
内需は弱含むも外需が下支え

 足元の中国経済を巡っては、供給サイドをけん引役にした景気拡大の動きが続いている。7~9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比4.8%と前期(同5.2%)から鈍化して丸1年ぶりの低い伸びとなったものの、前期比年率ベースでは4.5%と前期(+4.1%)からわずかに加速している。

 その結果、9月までの累計ベースの経済成長率は5.2%となり、今春の全人代(第14期全国人民代表大会第3回全体会議)で示された政府目標(5%前後)を上回る水準を維持している。

 個別指標の動きをみると、ハイテク関連を中心に鉱工業生産は一貫して拡大が続くなど足元の景気拡大の動きをけん引している。また、米中摩擦の激化を念頭に、米国以外の国や地域向けの輸出を活発化させており、米国向け輸出の減少を相殺している。

 その一方、ここ数年の不動産不況に加え、コロナ禍以降の若年層を中心とする雇用回復の遅れも重なり家計部門は節約志向を強めるなか、習近平指導部が主導する腐敗防止を目的とする「倹約令」も影響して、小売売上高は力強さを欠いている。

 さらに、不動産不況が足かせとなり、不動産投資は頭打ちが続くほか、米中関係の悪化も影響して外資系企業を中心に設備投資は停滞し、固定資産投資も減少基調が続いている。

 このように需要サイドは内需が総じて弱含む一方、外需が下支え役となる展開が続いている。こうした需給ギャップを反映して、足元の物価はゼロ近傍で推移するなど、ディスインフレ圧力に直面している。

 次ページでは、分野、部門別に中国経済の現状を検証していく。